すれ違い 2

 それから、色々あった。俺と深津が付き合っているというおかしな噂が流れ、あいつは見事にそれを信じ、俺と対立した。どうやら俺は信頼されていないらしいということが分かって、悔しくなったりした。

 また、あいつが俺のシャーペンを盗って、翌日、床に落ちていたと深津に渡された。それを問い詰めると、本当に知らない、机に置き書きして返したと困惑気味に言われたが、信頼されていなかったことが仇となって俺も俺で信じることができず、何日かあいつに対して怒っていた。


  今思えば、くだらないことばかりだ。



 いつだったか、あいつに「葉弥が何考えてるのか、うち、分かんない」と言われた。

 確かに、あいつは不機嫌じゃないのに「不機嫌でしょ?」と言ってきたり、楽しんでいないのに「楽しそうだね」と言ってきたりすることが多かった。


 しかし、それは俺に限ったことではないらしく、自分で「人が何をどう思っているのか、うち、あんま分かんないの。表情でなんとなく分かるけどさ、誰もがみんな、感情を表に出すことなんてないでしょ。悟られたくないこととか、本心を出せないことって結構あるし。でも、相手がどう思ってるのか、うちは知りたい。知った先で、うちや相手が傷ついても、本心を知る必要はあると思う。でも、うちは人の感情を読むのが下手だから。人の本心が分からない」と言っていた。


 要するに、観察力や洞察力がいちじるしく低いのだろう。口下手の上に相手の気持ちが読めないってどうなのかと思ったが、薄笑いだけにしておいた。

 でも、こいつが人の気持ちを知ろうとしていることは分かっていた。

 俺の気持ちは思い込みと勘違いで決められているような気がするが、10個中10個全ての予想が外れているわけでもない。

 でも、本当に機嫌が悪いときに「不機嫌でしょ?」と言われると、更にむかつくもので、「不機嫌じゃない」と答えたり、楽しいと思っている時に「楽しそうだね」と言われると、素直に頷くと負けたような気がして「べつに」と答えたりした。


 あいつに限って、だけど。


 まあ、なんやかんやあったが、俺とあいつの関係が180度変わったのは、毎月ある委員会の定例会議の時だ。


 あいつにとって、最後の委員会になってしまった。

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