2人目 河森 葉弥の場合
出会い
古湖由乃は、学校より病院にいる方が多いんじゃないのか、と思うくらい欠席と入院ばかりしていた。
初めはクラスの奴らもなんとなく遠慮をしていたが、学校に来るあいつは入院をしていたことなど1ミリも感じさせないほど、明るかった。
その明るさのおかげで今やクラスの誰一人遠慮していない。
そして、その明るさ故、友だちも多かった。
しかし、その中で一番強固な絆があるのは
野木は親友が死んだショックで、一週間ぐらい学校を休んだ。その後、野木は学校に来たが励ます声にも耳を貸さず、一人自分の机で黙り込んでいた。そんな野木を、女子はだんだん遠のけ始め、少し経ってから男子も野木のことを気にかけなくなった。
イジメ、ではない。
今、野木は他人との関わりを絶ちたがっている。そして、クラス全体も野木に呆れ、どうでもいいと思っている。その結果が、これだ。ただ、それだけだ。
俺は、あいつとの接点が全くなかったわけではない。どちらかというと、普通よりはあったほうだ。
俺とあいつは、同じ図書委員だった。いや、それより少し前に隣の席になったことで知り合うことになった。
俺にとってあいつの第一印象は、『めんどそうな奴』だった。
そう思うことになるきっかけは、英語の授業で、プリントを隣同士で交換して丸ツケをした時。
俺に戻ってきたプリントは凡ミスがとても多かった。点数もそれなりだったのだが、その点数の近くに、見れば分かるぐらいのサイズで「ダサい!」と、書いてあった。反射的に隣の席を睨むと、あいつはいたずらっ子のような目で、俺の反応を楽しむように笑っていた。
それからは、英語でプリントなどを交換する時は、俺もあいつも何かしら書いて渡していた。時には、もう一度プリントを奪い、書かれたことに対して言い返したりもした。
「こんなの間違えるの?」「馬鹿 阿呆」「お前の方がバカだ」
最初こそ、ムキになって書いていた。でも、だんだん楽しくなっていることに気づいた。こういうことを言うのはあまり気乗りしないが、俺が書いたことに対して、敵対感を剥き出しにして言い返してくるあいつを見ていると、楽しくなった。
でも、やっぱり学校はよく休んだ。あいつが学校を休んでいるときに英語があると、なんとなくつまらなかった。隣から面白い奴がいなくなると、全然楽しくない。だから、あいつがいるときに英語があると、本当に楽しかった。
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