第25話 悪夢 ⁂

 ナナさんが、心配だ。

 腕の中で、眉間に皺を寄せ、硬い表情で眠る姿を眺めながら思う。

 家族を一変に無くしたナナさんの心の闇は、相当深いものだろう。

 おじいさんや、工場の人達の支えで傷を癒したに違いないのに。

 こんな風に掻き乱すなんて、本当に神様は意地悪すぎる。

 きっと、ナナさんは、史花さんの気持ちや苦労が解るからこそ、切り捨てる事に躊躇している。


 だから、辛いんだ。

 僕なら、関わりを持たない方を選ぶけど、この人はそうじゃない。

 切り捨てたら、また、その事で傷付く。

 真っ直ぐで、繊細で、…… 嫌になる程優しい。

 だから僕が守ってあげないと。

 壊れてしまわないように。


 ナナさんが身動いだ。

 うなされながら、空を掴む。

「……ダ……ダメだ…… 行くな…… 」

 何か怖い夢を見ているのだろうか?

 見ていられず、声をかける。

「ナナさん。ナナさん! ……春日! 起きて!春日!!」

「あぁ。アキ…… 。俺…… 」

「うなされてた。大丈夫? 汗すごいよ。着替える? 」

「ん。そうする」

 いつものように、潔い脱ぎっぷり。

 白桃の肌が露わになる。

 暗闇の中で、華奢な身体が浮き立つ。

 肩甲骨のラインが艶めかしい。

 こんな時でも、目を奪われてしまう。


 ナナさんが振り向いて、目が合った。

「あ、ごめん。タオル取ってくるね」

「いや。ここに居てくれ。 アキ。頼みがあるんだ」

「うん。何でも言って」

「抱いてくれ」

「えっ?」

「抱いて欲しい。アキを感じたいんだ。……もうひとりじゃ無いって…… 膝を抱えていたあの頃の俺はもう居ないんだって、思い知らせてくれ」


 こんな風にナナさんから誘ってくる時は、もう準備が出来ている時だけだ。

 多分、シャワーの時から、人恋しかったんだ。

「ナナさん。 来て」

「…… アキ」

 傷だらけの僕の天使。

 腕の中にぎゅっと抱きしめて、ゆっくり口唇を合わせた。


 Tバックしか身に付けてないナナさんは、酷く妖艶で美しい。

 やっと治った傷口を抉られて、きっと、心の中は血を流しているだろう。

 僕が癒してあげる。

 ナナさんが、僕の服を脱がせてくれる。

 シャツを剥ぎ取り、僕の背中の少し割れた背筋はいきんに指を這わせる。

 ナナさんは、僕の背筋はいきんが大好きだ。

 背筋はいきんを割るのにはコツが要る。身体を鍛えていて良かった。

 ナナさんが、僕の首筋を噛み、胸の飾りを舐めた。

 息が上がる。

 ゆっくり押し倒される。

 バックルが外され、チノパンのボタンに手がかかる。

 ファスナーを口で咥えゆっくりと下ろされた。

 ナナさんは、僕の欲情を掻き立てる天才だ。

 

「ナナさん。僕にも触らせて」

 妖艶に微笑んだナナさんは膝立ちになり、Tバックに指を掛けると、見せ付けるように、ゆるゆると下ろしていく。

 

 いつ見ても綺麗だ。

 男のモノを見て、美しいと感じるなんて、思ってもみなかった。


 堪らず、ナナさんをベットに縫い付ける。

 耳を食み、首を食み、時々、きつく吸い付きながら、赤い花弁を落としていく。

 白桃の肌に、赤が映えてとても綺麗だ。

 悲しみや、苦しみは、僕が全部吸い取ってあげたい。

 胸にも、脇腹にも、小さな花を咲かせていく。

 胸の薄桃色を口に含んだ時、ナナさんの中心が切なく動いた。


 すっかり、快感を拾える場所になったようだ。

 僕が開発したと思うとめちゃくちゃ嬉しい。

 お互いの中心を擦り合わせながら、口唇を塞ぐ。

 軽く舌でノックすると、口唇がほんのりと開き、舌を誘ってくる。

 ナナさんとのキスは、蕩けそうな程に気持ちがいい。

 ビクンと身体が仰け反り、口唇が離れた。

「あ…… アキ…… アキ…… 」

「なに?」

「…… 俺から離れるな」

「離れないし、離さない。 イヤっていう程側にいる。安心して。 死ぬまでずっと一緒だ」

 安心したのか、ふっと頬を緩める。

 あー。可愛い。可愛すぎて壊してしまいそう。

 

「はぁ…… ぁぁ…… アキ…… キスして」

 あー。堪らない。

 頭の横に右腕を置き、噛み付くようにキスをした。

 しとどに濡れたお互いが、自然に触れ合い、クチュクチュと音を立てる。

「あぁ…… ナナさん 」

「ん。 来て」

 ベットサイドから、小さな小袋を出し口に咥える。

 片手で封を切ろうとすると、腕を掴まれ制された。

「今日は、アキのままで来て欲しい」

 

 白磁の肌が桃色に染まる。

 ピストンを始めると、ナナさんは僕に足を絡みつけ、腕を背中に回し、しがみついた。

 深い場所を突くと、背すじを触っていた指が、快感に爪を立てた。

 この痛みさえも、嬉しいなんて、もう僕はどうかしてる。

「奥に、熱いのが欲しい」

「あぁ、ナナさん、そんなに僕を煽らないで。保たなくなっちゃうよ」


 今日は、優しくスローセックスで行きたかったのに、今やそんな余裕は無い。

 

激しい愛の打ち付けに春日は意識は失われたのだった。

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