『三題話2:豚校長の受難』 お題:豚、校長、茶腕
領主より通達が来た、なんでも魔物が集まる地に対して私を派遣するという。
これは魔物退治に違いないと、千祖伝来の鎧に身を包み済んだ私であったが、オークがなにかをなげつけたとおもったら、視界を埋め尽くす光により意識を失ってしまった。
「くっ、殺せ!! このまま辱められるぐらいなら、祖先の誇りに準じて死を選んでやる!!」
「あの、なにか勘違いしてませんか?」
校長と名乗る豚顔のオークは紐でぐるぐる巻きにされた、私を見下ろしている。
伝承によると豚が混沌の神の加護を得て進化したのがオークらしい。
「なんだと、赤い紙に宣戦布告の文言を書いたのは貴様ではないか!」
「あれは異文化交流のために学校に招いたのですが」
「先ほどの魔術を学ばせ、堕落させるつもりだな!?」
「いえ、さきほどのはスタングレネードという鎮圧用の兵器で、相手を傷つけずに鎮圧するために使うものなのですよ」
「殺す価値もないというのか!」
「なんなのですかこの蛮族怖い……。まぁ、これでも食べて落ち着いてください」
私の縄を解くと、校長と名乗るオークはそっと茶碗を差し出す。
蓋を開けると、中から湯気に紛れて肉の香りがただよい、こうばしい。
しかし、ある可能性に気付き、私は背中に寒いものがはしった。
「まさか、人肉を食わせる気か……!」
「いえ、豚の生姜焼きですよ。こってりしてなくて食べやすいです自慢の料理です」
「貴様、共食いだろう!!」
「ははは、豚は雑食ですから豚も食うことはあるでしょうな」
「そもそもなぜ、異文化交流などをしようというのか。貴様らにまったく益がないではないか」
「いえ、こちらのことを魔物討伐と称して攻撃を仕掛けてくるのには年々困っておりまして、ならばいっそうこちらから啓蒙してしまったほうが安上がりであると結論が出たものですから」
「まるでこちらが野蛮人のようではないか」
「野蛮人以外なにものではないと思われますが」
「なにをいう、魔物を見た殺す、敵対者は殺す、歯向かうなら殺して見せしめに火を放つのは常識ではないか」
「蛮族の方が血も涙もあると思いますよ?
なんども送った平和の使者はどうなったのですか」
「むろん、首塚を作ってならべておるぞ」
「ええっ……」
ドン引きをしている校長の前に、空になった茶碗が置かれる。
「うまい、おかわり!!」
「まだ食べるのですか。面の皮が厚いですね」
「なに、お前らオークから人を食ったような話を聞いたのではな、小腹が立っていたんだ」
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