FileNo.1 ブラック - 04
● ● ●
僕が『壁』の正体を
『壁』は僕以外の人間には見えなかった。
『壁』は僕の前方だけでなく後方にも存在した。
そしてそれら『壁』は、必ず僕と一定の距離を保ち続けた。
一定の距離――それは
そして同じく既に述べた通り――それらは少しずつ、僕に迫っていた。
一度、叫び声をあげかけたことがある。下宿先の安アパートの
天井に、『壁』が見えた。
考えれば当然だ。『壁』は必ず僕の前方に存在する。僕が寝転べば、前に見えるのは天井だ。順調に迫れば、いずれ僕と『壁』の相対距離は、僕と天井の距離よりも縮まる。だから、寝転べば天井では無く『壁』が見える。その頃には『壁』はもう僕から数メートル先にまで迫っていて、高さ・幅共に一メートル二十センチ程の正方形の
――このまま『壁』が迫ってきたら、僕はどうなる?
他人には見えない『壁』。しかし、それらは僕には見える。
他人にはすり抜けられる『壁』。……僕にとっては、どうだ?
僕は最悪の結末を想定した。だから何とかして悲鳴を
僕は近所の神社に無理を承知で頼み込んだ。或いは電車を乗り継いで見つけた教会に。数日後には
しかし――では、どうすればいいのだろう?
ダメもとで病院にも行った。奇妙な幻覚が見える、と言って。しかし検査結果は問題なし。僕の健康状態は至って良好だった。脳に異常がないかも調べてもらおうとしたが、精密検査には予約等々で三週間ほどかかるとのことだった。恐らく、そんな
正確な刻限は分からない。
でもきっと、僕が前方と後方の『壁』に
でも――そう、疑問はこうしてぐるぐると回る。
――じゃあ、どうすればいいんだ。
そんな圧迫感と
あの電話が掛かってきたのは。
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