第18話僕は幸せ者

テツ視点


この店で働いて半年が経ちました。


来たばかりの時は不安が大きかったのですが働いてる内にその不安もなくなりました。


忙しい毎日だけど充実した日々です。


朝、陽が昇りは始めた頃に目覚めます。


井戸から水を汲み顔を洗うとユキが既に起きて朝食の準備をしていました。


僕らの名前は旦那様が付けてくれました。


元々の名前がありましたがそれは既に捨てました。


今の僕はテツです。


「おはよう」


「おはよう。いつもご飯の準備ありがとう」


「ううん。好きでやってることだから…気にしないで」


僕らは働いて得たお金を出し合って食事代にしています。


お店で食べると高くなるので必ず家で食べるようにしています。


僕の働いてるお店には色々な人が来ています。


そのおかげか買い物などをすると顔を覚えてくれてる人が多くておまけを付けてくれることが多いです。


「そろそろ皆を起こさなくちゃ…」


僕は自分の準備が終わると皆を起こします。


皆がベットで気持ちよさそうに寝ているのを起こすのは申し訳なく思います。


今まで固い床にボロボロの布を引いて寝ていただけに…


しかし今は違います。


「皆!朝だよ!起きてご飯食べるよ!」


のそのそと寝ていた子達が起き始めました。


皆の顔洗いを手伝い、朝食の時間です。


今日のメニューはパンとスープとサラダ


前はこんなに贅沢に食べられなかったなぁ…


「では、今日も旦那様に感謝しながらいただきましょう!いただきます!」


僕の声と同時に皆も一斉に声を上げる。


普通は神に感謝するべきなんだろうけども…僕の神は旦那様なのでこれでいいと思う。


皆もそう思っていると思う。


朝食を済ませ、食器を洗う子と洗濯する子に別れます。


僕は洗濯する方になりました。


毎日洗濯しなくても…と思うのですが、旦那様が


「毎日洗濯して、綺麗な毎日を心がけるように」


と言われたので毎日仕事前に洗濯を終わらせます。


洗濯が終わると仕事着に着替えます。


ボタンがついた白いシャツ、黒いズボン


これが仕事での服です。


女の子はズボンではなくスカート。


この服も全員分が5着ずつあります。


家も服も貰い、更に仕事まで与えてくれる旦那様はやはり神のような存在に思えました。


仕事場に到着すると既に旦那様と奥様達は準備を進めていました。


少し時間を掛け過ぎてしまったようですが旦那様は怒りません。


普通なら怒鳴られると思います。


開店の準備が終わると今日の持ち場が発表されます。


「今日の扉横はユキとテツ、他はホールで接客、洗い物は気が付いたらやるように。休憩後は扉横はエリとタケに変更するように」


扉横…今日はお金の管理をする仕事になりました。


ある程度覚えることは出来ましたがお金を扱う仕事は非常に難しいので一生懸命頑張らなければ…


サポートに奥様のクルル奥様が付いていてくれますが、いつかは一人できちんとできるようにならないと…


それぞれが配置に付くと扉が開かれる。


開くと同時に沢山の人がなだれ込んできた。


「白飯セットだけで!」


そう言われ木のトレーを渡すと同時に500イェンを受け取る。


この流れが僕の今日の作業だ。


「セットと肉の札を頼む!!」


「卵と野菜と頼む!」


「セットだけだ!!」


扉の横で注文を聞きお金を貰うだけなのに忙しい…


他の子達の動きも良い為なのかお客さんがどんどん入れ替わる。


旨い、早い、安いが揃ったこのお店ならこの光景は当たり前なのかもしれない。


正午あたりを過ぎると更に客が増えてくる。


朝の人達は仕事前に


昼の人達は休憩中に


夜の人達は仕事終わりに


これが毎日続くのだから凄い。


お釣りの渡し間違えがないように…かつ早めに捌く事が要求される。


昼のピークが終わると少し落ち着いた時間となる。


今のうちに店内清掃などを行う。


お客さんはいるが女の人が多い。


「今のうちに休憩だな…エリとタケは他3人連れて飯食ってくれ。戻ったらテツとユキが残りを連れて飯いってくれ」


もう少ししたら休憩か…もう一踏ん張り頑張ろう。


エリとタケが戻ってきた。


「今日は何食べた?」


「今日は魚にしたよ。肉も食べたいけどたまには魚が食べたくなるんだよね」


今日は魚も有りかな…


他の3人を連れてユキと休憩に入る。


今日はどうしようかな…


さっきまでは魚の気分だったけどいざとなると迷う…


昨日は鶏肉にしたから今日は豚肉でもありかなぁ…


結局卵と野菜の炒め物にした。


迷い過ぎて結局これにしてしまった…


ご飯を食べ終わると夜の時間に向けて準備を始める。


準備と行っても開店前と同じ状態にするだけだ。


徐々に人が増えてきた。


ここからは夜の時間になる。


・・・


ある程度お客さんを捌いたら声がかかる。


「テツ。何人か家に戻していいぞ。色々と準備があるだろうし」


そう言われ4人ほど家に戻した。


ご飯を作る、風呂の準備をする、洗濯物と取り込む


ご飯を作るのはユキの仕事だった。


正確にはユキに仕事じゃないんだけど自然とそうなった。


ある程度時間が進むとお客さんがまばらになってきた。


そろそろ閉店の時間になりそう。


お客さんが一人もいなくなると店の扉が閉まる。


残った僕達はテーブルや床の清掃、皿洗いなどをしてから家に戻る。


家に戻るとご飯が出来上がっていた。


全員で席につきいつもの感謝を…


「本日も無事に過ごすことが出来ました。これも旦那様のおかげです。いただきます」


全員が一斉にご飯に被りつく。


働いた後のご飯はやけにおいしく感じる。


ご飯を食べ終わると今度はお風呂の時間だ。


全員が一斉に入れるようにと大きいお風呂になっている。


前まででは考えられない生活だ。


旦那様のお店が無くならなければずっとこの生活が続けられるんだろうと思っていた。


風呂から挙がって少しすると旦那様がやってきた。


毎日皆に本日の仕事完了のお金を渡しにやってくる。


一人一人名前が呼ばれ全額受け取るか貯金しておくか選べることが出来る。


これはこの家に金庫がないのでそのままにしておくと危ないという旦那様の心遣いだ。


全員が2500イェンを貯金


残りの500イエンを次の日の食事代にする。


何か欲しい物があった場合は旦那様に言ってお金を出してもらう。


無駄遣いはせずにしっかりと貯めておく方が安心だ。


そして今日も一日が終わる。


明日も無事に過ごせたら嬉しいな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る