23.最後に立つ者は

1


「サイエンさん、生きるのを諦めないでください!!」


 聞き覚えのある声が聞こえる。

 はぁ、来てほしくない人が来てしまったな。

 意気込んで単身で突っ込んでいったのに、結果がこれじゃあ、笑いもんだぞ。大体、防御用の魔法を攻撃に転用するったって限度があるぞ。

 このゴーレムを倒して主人に攻撃を当てる為には、剣と盾くらいはないと。

 盾を用意することはたやすいが、盾だけじゃあどうにもならない。攻撃用の武器があって初めてこのゴーレムは倒せるんだ。


「さて、もう終わりにしようじゃないか。やれ、石像たちよ」


 石像の剣が迫ってくる。

 一応ただで死ぬってのも癪なので、何回かは守っておく。


「『守護ディフェ結界リオ』」


 詠唱すると、俺に迫っていた剣五本が俺の目の前ではじかれ、うち一本は折れた。盾が霧散したのは言うまでもない。

 そして、その剣はコスト削減のためなのか知らないが、空洞になっていた。


「こざかしい。抵抗は無駄だと悟ったらどうだ?」


 ハーキンは変わらずこちらを煽ってくる。

 あぁ、あいつを一発ぶん殴ってみたくなってきた。

 あぁ、この手があったか・・・・・・・・。……この方法で行けるか?


「さんざん煽りやがって、守護結界」


 俺は立ち上がり、こちらに剣を振りかぶっていたゴーレムの攻撃を防ぐ。

 もう一本剣を折り、距離を詰める。

 そうしてゴーレムが俺の前に立ちふさがると、その体を守護結界で横なぎにするように思いっきり倒す。

 そうやって次々召喚してくるゴーレムを倒しながら距離を詰め、とうとう主人の目の前にやってきた。


「なっ、その体でどうして動ける……!」

「俺の可愛い主が見てるからな、簡単には倒れられねぇよ」


 そう耳元で告げると、俺は手に持ったものをハーキンの足に突き刺した。


「はっ……!? お前、何を……!」


 ゴーレムたちは、主人が痛みでコントロールできなくなったのか次々と土に戻っていく。


「お前がゴーレムなんて遠回しな手法で俺を殺そうとしてなかったら、この手法は思いつかなかっただろうさ」

「どういう意味だよ……」

「空洞……、これがどういう状態を表すか知っているか?」


 空洞とはつまり、内側に何もない箱状になっていることを意味する。箱状であるならば、つばのついていない剣を疑似的に再現することも可能なはず。

 俺は一度守護結界を利用してゴーレムを攻撃し、そして通用したのを確認すると、これを利用して主に一矢報いれるのではと考えた。

 そしてそれは見事達成されたわけだ。


「おい、一撃入れたぞ。俺の勝ちだ」

「くそっ、俺は認めねぇぞ……!!」

「ルールはルールだ」

「……ッ!」


 勝負が決したのを見て、ケーナちゃんが駆け寄ってくる。


「サイエンさん、すいません、私が決闘なんかやめようって、私の過去をお話ししてしまったばっかりに……!」

「いいんだって、この決闘は俺が勝手に起こしたんだ。君は何も悪くないよ」

「でも、原因は私です……!」


 いつの間にかケーナちゃんは瞳を潤ませ、こちらを見上げていた。

 このままでは泣き出しそうだ。


「あぁ、だからケーナちゃんは悪くなんだって! ちょっと、泣かないで、ね?」

「いやです……! もう絶対離しません!」

「あぁん、もう、わかったから、ちょっと離して!」


 なんか、ケーナちゃんてぺったんこなお胸に見えて意外とサイズあるんですね。

 ……とか、おい、何考えてるんだ、意識を正気に保て、サイエン!

 あれ……? なんかほんとに意識なくなってきたんですけど?

 このままだと、俺ほんとに死んじゃうかも……?


「あっ、サイエンさん!? ちょっと、起きてください! サイエンさん!」


 駄目だ、死んだわ、これ。

 あいるびーばっく。

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