05.安眠は大事だ

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 俺は疑問を覚えた。

 あれ? 俺って現世では三十のしがないおっさんやってたよな?

 なんでこんな年齢若返ってるの?

 転生マジック?


「あの、どうされたんですか?」


 俺が鏡の前に立ってすぐ驚きに顔をゆがめたからか、ケーナちゃんは怪訝に思ってそうな顔をしてこちらを伺っている。

 うーん、とりあえずその服チラチラ色々見えそうで見えないから着替えてほしいな。

 俺の精神衛生によくない。


「いや、これを何と言って説明したらいいのか……」


 馬鹿正直に「俺実はもともとおっさんだったんだよね! ぺろぺろ」とか言ったら最悪ケーナちゃんのお父さんに殺処分されかねないし、かといってこれをごまかすのも怪しまれかねない。

 さて、どうしたもんか……。


「あの、具合が悪いんだったらお水持ってきますけど……?」


 ほらぁー!

 返事渋ってるからケーナちゃん心配しちゃってんじゃーん!

 ちょっと謝りなよぉ、男子!

 ……はい、すいません。

 ちゃんとやります。


「いや、ちょっと、ね。こっちの世界に来てから自分の顔を見たことなかったから、ちょっとびっくりしちゃってさ」


 一応前の世界の記憶はあるていだから、下手に記憶喪失を匂わせないようにしないと。


「そうだったんですね。あっ、そういえばサイエンさんは住むとこないですよね?」

「あっ、そういえばそうだ」


 ん?

 ってことは俺外で寝るの?

 毛布もないのに?

 流石に凍死することはないだろうけど、魔物に襲われたら恐らく死ぬよね?


「あの、よかったらここ、使いませんか?」


 そう言ってさされるケーナちゃんが使ってるであろうベッド。

 もしかしてケーナちゃん、俺に襲われてもいいと思ってる?

 いや、ないないない。たぶんこの子は俺のことを使い魔として、所謂ペットとしてしか見ていないはずで、異性としての魅力は感じてないはずだ。

 だから俺の勝手な考えで行動して傷つけるのは本意ではない。


「いや、部屋に泊めてくれるのはうれしいけど、さすがに女の子と一緒の部屋っていうのはなんかよくない気がする。僕のことは気にしなくていいから、ベッドは一人で使ってくれよ」


 ということで、毛布を拝借。


「え……? 一緒に寝ましょうよ?」


 ケーナちゃんが残念そうな顔してるけど、ここは耐えろ。

 確かにケーナちゃんは可愛い。

 しかし、それに手を出すのは俺の役目ではなく将来のお婿さんだ。

 俺は見守る立場なんだからな。

 一緒に眠るくらいなら……、なんて甘えを見せたら俺の欲に殺される。

 悲しいがここは我慢、我慢だ……。


「ケーナちゃんは気にしなくていいから。主は使い魔の最低限の面倒を見るだけで充分なんだ。そこまで考えてくれてるだけでうれしいよ」

「そうですか……。じゃあ、これだけでも使ってください」


 俺がやんわりと一緒にベッドインすることを拒否すると、ケーナちゃんはクローゼットというか、押し入れの様なところから毛布を数枚と枕を出してくれた。


「こっちの厚いほうは床に敷いて、こっちの薄いほうは掛けて使ってください」

「ああ、ありがとう。借りるね」

「はい。……あの、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


 ケーナちゃんが微笑みながらこちらを見てくるので、俺も微笑みを返した。

 そうすると安心したのか、数分後にはケーナちゃんが眠るベッドからすぅ、すぅと寝息が聞こえ始めたので、俺も眠ることにした。

 主の安眠を守るのも使い魔の役目だからな。

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