曇り空とテラキドー
「今日は全国的に曇り空が広がり、一日中、不安定な天気が続くでしょう。一部地域では雨の可能性もあるので、折り畳み傘を持っていると安心かもしれません」
お天気お姉さんの言うとおり、朝からチラついていた雲は、昼になっても晴れることはなく、より一層濃くなっているように感じる。まだ雨こそ降っていないものの、あと二時間後に雨だといわれれば納得できるような空模様だ。
授業を終え、放課後を通り過ぎ、帰宅しても、結局雨が降ることはなかった。空模様は回復することはなく、夜の帳が降りた後でも、相変わらずの曇り空だ。
徐に部屋の窓から夜空を眺める。
『テラキドー』
建物間の中の雲間に謎の言葉が見えた。
なんだよテラキドーって。とりあえず観に行くかな……
コートとマフラーを着込み、玄関に向かうさなか、母親に呼び止められる。
「ちょっとちょっと。こんな時間にいつも何しに行ってるの?」
まあ確かにそうだよね。むしろ何故今まで放置してたし。相変わらずの放任主義だ。
「星を観に行くんだよ」
まあ、嘘ではないよね。
「あれ、星なんか興味あったの? 言ってくれれば望遠鏡あるのに」
「そうなの? じゃあ貸してよ」
まあ、別に使わないんだけれど。
「そんな急に言われてもないよ。お父さんのだし。探しとくよ」
「あっそ。じゃあ見つかったら貸してよ」
そう言うと、玄関を開け外に出た。
寒いな。
締めかけたドアの隙間から、風邪引く前に帰りなさい的な忠告が聞こえた。
はいはい、わかってますよーっと。
寒さで軋む体に鞭打ち、山の上公園に辿り着く。
『今日ゎ ラブラしてきたョ
カ るんだけど、やっぱゴミだらけだったな。
自 をつぶしちゃったんだね……
このお陰 えられてるけど、素直に喜 』
案の定、チラつく雲で断片的な文字しか確認ができない。
とてもじゃないが、読めたものではない。どうすべきか。
ただ待つにしても、今日は風が強いわけではなく、雲の流れも非常にゆっくりだ。
だいぶ体も冷えてきてしまっている。一旦コンビニで肉まんでも買ってこよう。
戻ってくる頃には、雲に動きがあるかもしれない。
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