クリスマスと片想い

世の中はクリスマスムードも最高潮といった様子で、街はイルミネーションとカップルで溢れかえっている。


そんな街に居心地の悪さを感じる僕はといえば、人通りを避けながら、街を後にする。恐らく今日の彼女は、さぞクリスマスというイベントに浮かれたブログを書いている事だろう。


誰に見せるでもない、やれやれという様子を浮かべながらも、そのクリスマスブログさえ楽しみにしている自分がいた。



コンビニで買ったチョコまんを頬張りながら、いつもの坂道を登る。

決してささやかなクリスマス気分という訳ではない。

寒いから、暖まりたいから食べているにすぎない。

今日だけチョコまんを選択したのは、偶然だ。



ちょうどホカホカのチョコまんを食べ終わり、体の内側からポカポカとし出したのに、心はどこか寒いなと感じた頃に、坂道を登り終えた。



『メリー・クリスマス!!.。゚+.(・∀・)゚+.゚

…といっても、ゎたしには、クリスマスの習慣なぃんだケド(´・ω・`)

でも大切な人と過ごす日なんだよね? もしカレと過ごせるなら毎日でもクリスマスしたぃな(´;ω;`)』



いつもの展望には、いつもの彼女の駄文が広がっていた。

しかし、クリスマスの習慣が無いというのが、意外だった。



ギャル語じみたある種高度な日本語を使いこなしているため、日本人であることを疑わなかったが、どこか別の国の人なのだろうか。それとも日本人でも、仏教徒とか宗教にこだわりのある家庭で育っていたりするのだろうか。


しかしたまに出てくる「カレ」という存在。度々出てくるものの、一緒に過ごしたというものではなく、過ごしたいという内容のものばかりだ。


これは、いわゆるカレシ的な存在ではなく、片想いということなのだろう。


僕は、今のところ片想いをしている女性は居ないが、こういった時に一緒に過ごす大切な人が居ないという点では、非常にシンパシーを感じる。


この真冬の寒空の下、僕は一人じゃないというようなことをなんとなく感じた。

僕なんかにこんなことを言われてもなんの救いにもならないだろうけど、少なくとも世界中で最低でも一人は、キミの日々の記録を見ているし、なんなら楽しみにしているということが、少しでも彼女の心の隙間を埋められたらと思う。



でも、この気持ちを伝えることはできない、術がない。



彼女の願いの一部分だけでも叶うことを、見えない星空に祈りながら、僕は家路についた。

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