第136話 襲撃開始
ジ・ザーズの飛行魔法により雲よりも高く飛んでいる船の上、そこに2人の姿が見える。1人はゼフ、そしてもう1人はサン。隣の船にはアリシアとフォルミルドが見える。
「いい眺めだな、こういうのも悪くない」
「…… ゼフ様」
気持ちよく下を眺めるゼフに対して、サンは何故か元気がない。
「どうしたんだ? 船は嫌だったか?」
「いえ、そうではありません……」
「なら何だと言うんだ。 隠さずに全て話せ」
サンはそう言われ、渋々口を開く。
「ゼフ様、私はこの作戦は完璧ではないと思います。 例えば裏切り者がいたとしたら、メッセージの魔法でバレてしまいます」
「確かにその危険性はあるな。 もしも、可能性としては果てしなく低いが、俺の知ってる覇王を召喚できるとしたなら終わりだな」
「でしたら、どうして……」
「サン、お前にだけ話しておこう。 何故、こんな作戦を決行したのかを」
ゼフはじっと見つめてくる。それにサンは顔を逸らしてしまうが、ゼフはそれを無視して話始める。
「覇王、こいつを召喚されればどの道詰みだ。例えそれが賭けだったとしても可能性があれば即急に摘んでおかなければならない。 だが、安心しろ。 例え、この身が動かなくなる程の代償を使おうと覇王は倒す」
(ゼフ様…… そのような覚悟をお持ちだったのですね……)
サンはゼフのことを少し知ることができ、嬉しく思うと同時に何かゼフのための言葉を考える。だが、思いつかない。しかし、ゼフを見ると先程とは打って変わって、いつものように笑っていた。
「だが、その心配はいらないだろう」
「どういうことですか?」
「まず、お前は裏切り者を危惧しているようだが、メッセージの魔法はデス・レイが蟲都全体に使用してる阻害魔法により使うことはできない。 覇王ならまだしもこの世界の奴で終焉種の魔法を突破することはできないだろう」
「ですが、可能性としてはあるのでは?」
「そうだな、だから俺は前の世界の常識を利用することにした」
「…… 常識ですか?」
「そうだ、俺がいたの世界では当たり前に複数の魔法を使用する。 だから、そうさせてもらった。 たとえ、1つ目を防げてたとしても、次から次へと魔法がその身に受けることになる。 それがましてや終焉種の万を超える阻害魔法ならこの世界の奴らならには無理だ」
「なんとなくですが、理解できました。 つまり、アクマリが気付かない間に殺してしまうのですね」
サンの言葉にゼフは笑う。
「確かにそうとも取れるな。 俺がやるのは覇王を召喚する方法を潰すことだ。 奴は生け捕りにする。現状、覇王以外…… いや、魔王以上と言うべきか、そいつら以外は危険視しなくても大丈夫だ」
「そうなのですね」
「そうだ、これで後はどれだけ街の被害を抑えて、人間を殺さずに済むかだ。 ただし、覇王への警戒は怠らないほうがいい。 もしかすると、終焉種でも探知ができない未知なる何かがあるかもしれないからな」
「わかりました、その言葉を心に強く刻んでおきます」
一見余裕そうなゼフだが、可能性可能性と少し弱気なのも事実である。そんなことを考えていると、船が停止する。どうやら水都に着いたらしく、普通では考えられない速さである。
「ようやく、着いたか」
「ここからどうするのですか?」
「一先ずはアクマリのあるか分からない能力を防ぐことだな」
そう言ったゼフは召喚魔法を使う。船上に現れた魔法陣は3つ。暫くすると、割れた魔法陣から現れたのは3mはあろう巨大な岩である。いや、その岩からはクワガタのようなハサミ、アリのようなお尻、そしてクモのような脚が生えている。
「こいつは岩蟲、物理ダメージを全て無効化する蟲だ。ただし、魔法を防ぐ方法がないという大きすぎるデメリットを持ってるがな。 こいつに水都にいる兵士を引き付けてもらう」
「ということは、ゼフ様はその間に城に潜入するのですね」
「そうだ、準備はいいな?」
「はい」
ゼフはそう言うと、アリシアに指示を出す為コネクトの魔法を使う。そして、同じように岩蟲を船上に召喚する。そして、ゼフの命令により岩蟲は船から身を投げるのだった。
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