第132話 神のお告げ

調査隊を派遣して早くも3日が経った。水都の女王アクマリは現在、ある街について調査していた。それは……。


「クレアラトル、ミリオンよ。 再度聞くが、滅びた皇都にはお主の仲間がいたんじゃな?」


皇都についてである。


「そうっちゃ、俺が感じた仲間の反応は3体っちゃ」


「私もそのように感じました。 ですが、調査によれば見つかったのは砕けた封印石が1つだけ。 他の2つは一体どこにいったのでしょうか?」


「仲間の反応というのは近くに寄らないと行けないかえ?」


「はい、その認識であってます」


「そうっちゃ、だから俺達が最後に感じたのは約5年前が最後っちゃ」


それを聞きアクマリは封印石を持ち出された可能性を考える。しかし、分からないことがある。


「皇都と魔族が滅んだ要因はタイミングからして蟲王のゼフじゃろ。 ならば何故あやつは悪魔を1体しか従えてないのじゃ」


「単に他の人間と契約されたら面倒っちゃから保管してるのではないっちゃ?」


「別に犯人がゼフとは限りませんよ?」


「どういうことっちゃ?」


「私達も魔王の1人と交流をはかっつもらい水都から帝都へ安全に行けるようにしてもらいました。 勿論、大量の金品を納めてね。 そのおかげで非常に良い関係が築け、魔王もこのことがバレないよう隠してきました。 まあ、急に滅んだのは驚きましたが」


「そんなこと誰でも知ってるっちゃ。 もしかして俺達が支配した街が裏切ったんちゃ。 俺達に唯一敵対した皇都と仲良くしてリスクしかないっちゃか?」


水都は現在、蟲都を含む7つの街を支配下に置いている。蟲都はまだ甘いところがあるので詰めなければならないが。人間の街は蟲都ができる前は4つが水都の支配から外れていた。それは王都、聖都、帝都、皇都である。この4つを支配すれば人間の街の全支配を達成できたが、中々これが上手くいかなかったのである。


「まあ、良い。 事態は一刻一刻変わるものじゃ。 ここはポジティブに考えるんじゃ。 不気味で支配するのに厄介だった皇都は無くなり、思慮深い皇帝が支配してきた帝都は今や臆病者の王に蟲の街へと変えられたと」


「そうですね、嫌なことばかり考えるべきじゃありませんね」


「そうじゃ、じゃがこの事は調査を進めるように。 それがこの先、妾達が生き残れるかということになるかもしれんからのう」


「了解っちゃ」


クレアラトルがそう返事したタイミングか、扉がノックされる。


「入れ」


アクマリがそう答えると、扉が開かれる。そこにはエルミアが立っておりアクマリが座っている近づいてくる。


「アクマリ様」


「どうしたんじゃ」


「3日前程に派遣した調査隊の定期連絡が途絶えました」


「なるほどのう、敵は想像以上ということか。 じゃが、これでミリアは嘘をついてないということが分かったのではないか?」


「はい、疑って申し訳ありません」


「よい、じゃがデス・レイの力を確かめるのは困難と分かった今、もうあの街に近づくことはない」


「諦めるのですか?」


「よく考えてみるが良い、妾達を終わらせることができるのならこのように回りくどいことをしなくても良いじゃろ?」


「確かにそうですが、まだ何があるかわかりません」


「当たり前じゃ、ゼフは妾に従っているのは覇王という恐怖があるからじゃ。 じゃから完全に支配できるまで油断できん」


「そう言えばアクマリ様、聞いたことが無かったのですが、覇王とはなんなのですか? また、それは一体どこで聞いたのでしょうか?」


アクマリはエルミアにそう聞かれると、少し部屋を見渡す。そして、決断したのか口を開く。


「ミリアは今は自室か。 ならば良いじゃろう。 じゃが、これは信頼してるお主だからじゃぞ?」


「…… はい」


エルミアは息を飲む。それは信頼していると言われた嬉しさか、覇王というのを聞けるからか、はたまた別の理由か。


「そうは言っても妾も詳しくは知らんのでな。 覇王は圧倒的な力を持つ存在じゃ」


「圧倒的な力ですか……?」


「そうじゃ、その力は手を払うだけで星を砕く」


「それが蟲王が恐れている存在だと……」


「そうじゃ、それもこれも神のおかげじゃ」


「…… 神ですか?」


「妾はそれに教えられたんじゃ。 覇王なる存在も、それが未知なる強敵の弱点だと。 じゃから、妾は覇王を召喚できるという能力を広めた」


「なるほど…… そう言う事なんですね」


「そうじゃ、こんなこと言っても信じないじゃろうが、これが事実じゃ」


「ありがとうございます」


「さて、それでは蟲都に賠償を請求する準備を始めい。 それまで妾は私用を済ませておこうかの」


「わかりました」


エルミアは今までの謎が解けたかのか、スッキリとした声でそう答えるのだった。

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