第120話 暗殺者

(なんなんだこれは……)


ゼフはガラパにとある場所に案内されていたが、何故かなれなれしく肩を組んできたので困惑していた。


(こいつも暗殺者だろ? 何故出会ってすぐの奴に肩をまわすんだ? 流石に警戒心無さすぎだろ……)


そんなことを思っていると隣のガラパが話しかけてくる。


「なあ、バーナレク。 もし俺が暗殺者じゃなかったらどうするつもりだったんだ?」


「その心配はない。 暗殺者は決まってある能力を持っているからな」


「能力……? 一体何の能力なんだ?」


「隠密だ、まあそれを持っていたとしても熟練度が低ければ見破られるし、そういうのが苦手なやつは別のやり方を探す。 だからといって持っといて悪いもんじゃないからな」


「確かにそうだが…… 見て分かるものなのか?」


「いや、わからない。 だから、ミリアがいる」


「どういうことだ?」


ガラパは首を傾げる。


「こいつは神眼という全てを見通せる目を持っている。 こいつがいればそれも簡単なことだ」


「そうなんですか? 言っていただければもっと簡単に見つけられたと思うのですが……?」


「それは大丈夫だ。 暗殺系に特化した奴を探せと言われた時何を見た?」


「それは…… 戦闘力が高かったり、隠密に優れている能力を持っているものです」


「お前は今自分で口にしただろ? 隠密に優れていると。 別に説明しなくてもいいと思っただけだ。 それにお前には能力に慣れてもらわなければいけないからな」


「そうなのですか、説明ありがとうございます」


ミリアが軽くお辞儀をする。ガラパはそれを見ながら話の続きを始める。


「すげぇ能力だな…… 俺も欲しいなその能力」


「それは無理だろうな。 俺もこいつ以外が持ってるところを見たことがない。 まあ100億人に1人いるかいないかの確率だろうな」


「難しいことはわからねぇが、こんな子が1人残されるなんて同情するよ」


ガラパは腕を目に当て泣く素振りをする。それが嘘か本当か分からない。しかし、嘘をついてるようには見えなかった。


(いや、ダメだ。 簡単に信じてはいけない。 こいつが何かを隠し持っている可能性だってある)


ゼフは自分に言い聞かせながら進んでいくとガラパが止まるように指示をする。そこには古い宿のようなものが立っており、ゼフ達の目の前にはボロボロの木の扉が立ち塞がっていた。


「ここがバーナレク達が求めるものがあるところだ。 まあ、ないかもしれねぇがな」


ガラパはそう言いながら扉を開け入っていく。ゼフ達もそれに続き中に入ると中には酒を飲むもの、何やら賭け事をして遊んでいるものなど様々な人がいるようだった。数的には多くはないが、それでもここにいる者達が全員暗殺者と考えると驚く部分もある。


「こっちだ、バーナレク。 言ってなかったが、ボスに会ってもらう」


「ボスだと? ここは何か組織的なやつなのか?」


「それは会ってから聞いてくれ」


それを言うとガラパはすぐそこにある細い道を通っていく。それについて行くが、視線を他の奴らに向けるとこちらを睨むように観察しているようだった。


(見定めか…… もしもここがそういった所なら他にもこういう場所があるということだろう。 問題が解決次第そいつらを把握しなければな)


ゼフがそんなことを考えていると、ガラパが歩みを止める。そして、振り向きゆっくり口を開く。


「そういえば言ってなかったが、ボスは優しい。 だが、組織の人間以外は容赦がない。 だから、くれぐれも発言には気をつけてくれ」


「わかった」


ガラパはそう言うと、扉をノックし入る。


「失礼します、ガラパです」


ゼフも続いて入った時、そこには顔に無数の傷がある黒の服を着ている男が椅子に座りながらこちらを睨んでいるのだった。

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