第119話 尾行
ゼフとミリアはある男をつけ始めて10分程経つが、向こうも警戒しているのか未だに収穫はない。
(流石にすぐにはボロを出さないか。 だが、いつかは出る筈だ。 気長に待つとしよう)
隣にいるミリアは何度も殺すことによって、精神が崩壊しないように丁度良い恐怖を与えているので逆らうことはないが、念の為警戒は必要である。
「ミリア、そういえば聞いてなかったが怪しいと思った奴の能力はどういうものだった?」
「はい、殆どが戦闘に使われないものでした。 しかし……」
「暗殺系の能力を持っていたか?」
「……はい。 神眼を使っているので間違いはないと思います」
「暗殺者はいると思ったが、かなりの数がいるみたいだな。 まあ、俺を殺した奴は生き返ることができることを知らなかったみたいだから、お前が裏切ってる訳ではなさそうだな」
「そのようなことはございません。 私はゼフ様についていきます」
そんなやり取りをしていると尾行していた男が路地裏に入っていく。ゼフはそれを追うか、今は引くかを考える。
(気づかれても殺せばいい。 自害をしたなら生き返らせればいい。 ここは行っても問題ないな)
追うことを決めたゼフはそのことをミリアに伝え、堂々と路地裏に続く通路に入っていく。帝都でこのような場所に入ったのはなかったが、そこは人が通るにはあまりにも暗すぎた。
(もし俺を殺した奴が個人ではなく何か大きな組織だった場合、ここに住処を置くのが都合がいいな。 できればそうであって欲しくはないが……)
男を見失わないように尾行するが、どんどん暗い場所に進んでいる。それは10分を過ぎようとしており、流石のゼフも焦りを覚え始める。
(まさか俺を殺したのは暗殺者じゃないのか? いや、その線は確実だ。 そうでなければ誰にも気付かれずに城を出入りできるはずがない)
そんなことを考えていると尾行していた男の足が止まる。ゼフ達は影に隠れて何をしているのか確かめようとした瞬間、男が急にこちらに振り向く。
「いるのは分かってんだよ。 さっさと出てこい」
(上手くやってるつもりだったが、尾行は難しいな)
ゼフはミリアを連れて姿を見せる。
「オメェ、同業か?」
「そうだ」
「なんでこんなことした? それとも俺を殺そうとしたのか?」
「そうだと言ったら?」
ゼフがそう言うと男は笑い始める。
「カカカ、お前それは無理があるだろ。 尾行すらまともにできねぇ奴が俺に勝てるわけねぇだろ。 それで本当のとこはどうなんだ」
「なんだバレていたか。 正直な話、俺はお前の行く所を探っていた」
「なんでそんなことしたんだ?」
「こいつのためだ」
ゼフはそう言い、隣にいるミリアの背中をポンと叩く。それをされた彼女は流石慣れてるというべきか、直立不動の姿勢を維持している。
「意味が分からねぇな。 どういうことだ?」
「こいつはあの有名な暗殺者のジンの妹だ。 こいつの兄弟は全てゼフによって殺された。 因みに俺はジンの知り合いだ。 彼女はゼフを殺した人にお礼を言いたいらしい」
「あの有名な兄弟か! それでその知り合いが何のためにこんなことをしている?」
「ただの気まぐれだ」
「気まぐれね…… それで会ってお礼がしたいみたいだが、そんな簡単じゃねぇぜ」
ゼフがそれに返答しようとすると、隣にいるミリアが遮るように話し始める。
「私は構いません。 それが私にできることなんですから」
「いいぜ、一応は信用してやる。 たが、俺から離れない方がいいぜ。 なんたって俺の仲間は見境なく殺すからな」
(話しただけで信用してくれるのは都合がいいが、こいつは一体何を言ってるんだ? こいつが本当に暗殺者なのか怪しくなってきたぞ)
そう思いつつも確かめる必要もあったのでついて行くことを決める。
「俺はガラパだ。 お前達は?」
「俺は…… バーナレクという。 こいつはミリアだ」
「そうか、よろしく頼むな」
ガラパは暗殺者らしからぬ表情を見せながら、ゼフの隣で肩を組み始めるのだった。
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