第102話 考え

ジン達はその日、それ以上ゼフに関わらないことにすると、アジトに戻った。4人は普通の家に住んでおり、そこをアジトと呼んでいる。4人は椅子に座ると、最初にジンが口を開く。


「さて…… まさかあれほどの化け物とは思わなかったが、今回はどうする?」


「そんなの兄ちゃんに任すっしょ」


「あたしもサインズ兄ちゃんに賛成かな」


「そうか…… それでミリアはどうする?」


「私もジンお兄様に従います」


ジンは他の3人の意見を聞くと、しばらく考える。


「そうだな…… まず、色々ゼフに関して情報を手に入れた上でどういう印象を受けたか聞かせてほしい。 まずは、サインズから」


「正直な話、ミリアが言ったことが本当ならきついっしょ。 でも、10万金貨も捨てがたい。 この依頼は命を賭けてもいいと思ってるっしょ」


「エムニアはどうだ?」


「あたしはできればごめんだ。 近づけばわかると思うけど、あんなにはっきりとこのまま行けば殺されると思ったのは初めてだった。 今だって少し手が震えている。 あれはきっと関わってはいけない奴だとあたしは思う」


「最後にミリア」


「私は神眼で見た中では、恐らく最も危険な存在だと思われました。 そう思った理由として召喚士の実力もありましたが、1番は召喚できる25種類の種族の蟲の中で災害級とされているデスワームが下から2番目に弱い種族だったからです」


「そうか…… ますます殺せるか分からなくなったな…… 他に重要そうな情報はないか?」


「他にでしたら、恐らくこれが1番厄介だと思いましたのが、召喚士の能力です」


「召喚士の能力? 聞いたことないな…… それは一体どういうものだ?」


ミリアは喉を鳴らしながら、ゆっくりと口を開ける。


「それは…… 肩代わりです」


「肩代わりって何っしょ?」


「はい、サインズお兄様。 あのゼフというものは、自分の半径300m以内に存在する召喚した蟲に自分が受けるはずのダメージを代わりにに受けてもらうという能力のようです」


「ちょっと待って…… それって殺すの無理じゃない?」


「はい、そういうことになります。 エムニアお姉様」


「肩代わりか…… 召喚士にそんな能力があるとはな…… 弱点はないのか?」


「弱点かはわかりませんが、彼は召喚魔法以外はそこまでのようです。 もちろん攻撃系の魔法は使えず、少しサポート系の魔法を使うようです」


ミリアがそう言うと、話の途中でエムニアが割り込むように意見を言う。


「召喚士のくせに召喚魔法以外も使えるなんて、厄介なことするな……」


「そして、ここからが重要です。 彼はそれ以外は一般人すら劣ります」


「それマジ⁉︎」


「ミリア続けてくれ」


「はい、簡単に言いますと、魔力は桁違いです。 底は見えませんでした。 しかし…… 体力、力、防御力やスピード等は何も鍛えていない一般人にすら負けかねないレベルでした」


「そこが穴ということか」


「はい、ですが……」


「厳しいっしょ」


「そうね、あたしはそれを聞いたらこの仕事やりたくないね」


そんな意見を全て拾い、ジンは考える。これは勝算があるのかどうか。そのまま黙り込んだのち、しばらくすると口を開く。


「勝算はほとんどないに等しい。 だが、1つだけある」


その言葉に3人は驚く。ジンはさらに言葉を続ける。


「この街にはミリアの神眼と対をなすほどの能力を持つ者がいる。 だが、今回はやりたくなければやらなくていい」


「なんだ兄ちゃん、可能性があるのかよ。 俺はやるぜ。 10万は命を賭けるのに値するっしょ」


「あたしもやるよ。 怖いけど、あれは近いうちに殺りあう存在だと思う。 なら、早い方がいいでしょ」


「私もエムニアお姉様に賛成です。 今までジンお兄様に助けられて来たこともありました。 今度は私達が助けます。 それに10万金貨があれば、殺しを引退して安全な場所で暮らせます」


「そうか…… 俺はいい兄弟を持った。 共にゼフを殺してこの業界ともおさらばだ」


その言葉にサインズ、エムニア、ミリアの3人が頷く。


「それじゃあ、その能力というものを共有しよう。 それは封殺というものだ。 これは能力を1つ封印できるものだ。 これを使って奴の肩代わりを封印する」


「兄ちゃん1ついいか?」


「なんだサインズ」


「能力を封印できたとしても、蘇生魔法を奴は使えるんだろ? それに周りには蟲がいたらどうするんだ?」


「そんなことか、考えても見ろ。 奴はおそらく透明化で近くに待機させていると思うが、居たとしても1体か2体。 それを俺かサインズがいつものように引き剥がせばいい。 蘇生魔法は後からかけることはできないから、問題ない」


「そうか、それならやれるっしょ!」


「では、それが使える奴がいるのは同じく同業だ。 俺が連絡をつけてこちらに呼ぼう」


3人は軽く頷く。


「では、とりあえずはこれで行こう」


その日はそれで話を終える。しかし、彼らは神眼の穴を見落としていた。それは細かく見ることができるが故にゼフの何千万という蟲を見ることができる。しかし、それを全て見るのは1人では不可能なことでミリアは名前だけしか見ていなかった。また、召喚士ということで召喚魔法以外は具体的なところを確認していなかった。それが仇とならなければ良いのだが……

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