第5話 冒険者
ゼフは王都の検問所に到着し、自分の番が来るのを待つ。
幸いにも人が並んでおらず、すぐに自分の番になった。
しかし、衛兵がまるで奇怪なものを見るような目でこちらを見ていることに気づく。
「そこのお前! 止まれ!」
ゼフが進もうとした時、衛兵が大声で叫ぶ。
ゼフがいた元の世界では衛兵という職業はなく、とても珍しいと思っていたところにこれである。
衛兵はゼフに近づき、ゆっくりと口を開く。
「まずは、名前を名乗ってもらおうか」
「……ゼフだ」
挨拶をすると、衛兵の視線が隣のビートルウォリアにいっていることから全てを察する。
こいつも他の奴ら同様、魔物を下に見ている輩なのだろう。
「ではゼフ、その後ろにいる魔物はなんだ?」
「護衛だ、何か問題でもあるのか?」
すると、もう一人の衛兵が叫び出した。
「何が護衛だ! ふざけるのもいい加減にしろ! 魔物は街に入れるのは原則禁止だ!」
非常に不愉快な言動だ。
召喚士の魔物ならば危害を人に加えないことぐらい誰でも知っている。
ならば、考えられることは一つ。魔物と人間が対等ではない世界ということだ。
「はっきり言うが、君を王都に入れることはできない。君の職業が召喚士かサモナーなのは分かっている。その魔物を戻すか、王都の外で待機させるなら入れてあげよう」
「そうか、ならば一番楽な方法を使わせてもう」
探知魔法などを使い、衛兵達を調べ上げ、問題ないと判断したゼフは、ビートルウォリアに命令する。
すると、ビートルウォリアーが衛兵達の首を刈り取る。
頭が離れた身体は噴水のように血を上げ倒れる。
「『デ・ヘル』」
そして、隠蔽魔法を使い衛兵達の死体などの痕跡を綺麗さっぱり消す。
ここまでにかかった時間は約六秒である。
周りにはこの二人以外人がいなかったことは不幸中の幸いだったかもしれない。
「さてと、行くか」
ゼフはそのまま街に入っていく。
街を歩いていると、やはりというべきかビートルウォリアーに怯えて避ける人や凝視する人が多数いた。
ゼフは足早に目的地に向かう。
そして、目的地の冒険者組合に着くと、建物の前で深く考える。
ゼフはここまで盗賊、王族、衛兵と殺していたが、痕跡は消してきた。
その理由は、もしそれが原因で冒険者になれないという不安と、自分よりも強い者がおり、追われる可能性があるからである。
正直言うと、ゼフは人間を殺すことは嫌いではない。むしろ死は色々な感情の変化が見れて好きの部類に入る。
ただ、蟲を殺されるのは避けたいとは思っている。
だからといって、売られた喧嘩を買わないということはないが。
「入るか……」
ゼフは冒険者組合の扉を勢いよく開ける。
そこには殆どが、ならず者のような男達で埋め尽くされており、ニヤニヤしながらこちらを見ている。
ビートルウォリアーは外に待機さているが、一緒に入った方が良かったのかもしれない。
ゼフはそんなことを考えながら、受付に行く。
「ようこそ冒険者組合へ。今日は何の御用でしょうか?」
「冒険者になりたいのだが、大丈夫か?」
「大丈夫でございます。では、こちらの紙に記入をお願いします」
ゼフは羊皮紙を受け取ると、年齢や名前、職業などを記入していく。
書き終えると、受付嬢に羊皮紙を返す。
「ありがとうございます。ご記入に間違いはありませんか?」
「ああ」
「あら?」
「どうした?」
「いえ、ゼフ様は随分と珍しい職業にお着きになっていると思いまして……」
そう言った受付嬢は、ゼフを蔑むような目で見くる。
何故急に見る目がそのようになったのか分からない。とりあえず尋ねてみる。
「そんなに召喚士は珍しいか?」
「はい珍しいです。まず冒険者になる人はいないと思われます」
「なんだと……」
ゼフはその真実に驚愕する。
元いた世界では一つの冒険者組合にゼフ以外に最低10人はいた。
確かに元の世界でも評価は高くなかったが、ここまで軽視されてるとは驚きだ。
そもそもアリシアに職業を答え時に何も言ってこなかったのが悪い。
そのおかげでこの世界では普通の職業だと思っていた。少し頭が痛くなる事実だ。
「ゼフ様、大丈夫で御座いますか?」
「ああ、大丈夫だ。それより説明を頼む」
「分かりました、冒険者にはランクがございます。下はEから上はSSで御座います。そして、一定数の依頼をこなすことでランクは上がっていきます。今から冒険者カードをお渡ししますが、そこに全ての情報が書かれていますので、紛失などにお気を付けてください」
ゼフはSSランクという言葉に、ワクワクした気持ちになる。
「そして、冒険者同士の争いに関しましては、ギルドは関知しませんのでご了承お願いします」
「ああ、分かった」
「これで説明を終わらせていただきますが、他に何かありますでしょうか?」
「……いや、特にはない」
「それではこちらをどうぞ」
受付嬢は冒険者カードをゼフに渡す。
少昔のことを思い出す。すると、近くでガタッと音が聞こえる。
そちらを振り向くと、ガタイの良い三人の男がこちらに向かってニヤニヤとしながら近づいてきた。
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