第4話 森を抜けて
ゼフ達が森の中を歩くこと1時間。
未だ街に到着することは無く、森を歩いていた。
魔物に関してはデスワームが処理してくれてるからか未だ出会ってない。
魔物も大したことないようだ。
すると、アリシアはこちらを睨みながら口を開く。
「忘れてないから」
「そうか」
「今は安全の為に何もしないけど、絶対いつか殺してやるわ」
「できる日が来るといいな」
この状況でここまで強気な態度に少し感心するが、それに言い返すことはしない。
何故なら、ゼフは少し前に休憩した時に、アリシアが泣いていたのだ。
それ以上は情報の提供に支障をきたすと判断し、慎重に動くことにしたのだ。
森の中を歩いている間、アリシアに技のことを聞いたりしたが、それに関しては全くと言っていい程知らなかった。
魔法に関してはとても詳しいと言っていたので、いろんな脅威になるであろう魔法を聞いてみたが、予想通りこの世界に存在しないと断言された。
そして、最後に人間が住んでる街について聞いてみた。
「なるほど、今俺達が向かっているのが王都という街でその周りには帝都と聖都があるだけか」
「私達の中ではそうなってるわ。他に聞きたいことはないかしら?」
「いや特にはない」
ゼフは改めて情報を纏める。
(聞いた限りでは、脅威となる存在は無しか……)
そんな事を考えていると、アリシアが口を開く。
「ところで、聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」
「……ああ、構わない」
アリシアはそれを聞き、まずは一歩と喜ぶ。
(これでこの男が使う能力をを持ち帰れたら、対抗手段を練ることができるわ。ただ、嘘をついてるかどうかだけは見極めが必要ね)
そう考えながら、慎重に口を開く。
「あなたの職業は何?」
「召喚士だ」
ハッキリとそう答えると、アリシアが驚きの表情を浮かべる。
頭を抱えながらもアリシアは再び口を開く。
「もう一度聞くわ。あなたの職業は何?」
「召喚士とさっきも言っただろ」
「嘘じゃないよのね?」
「真実だ」
「そう……ありがとう」
アリシアは予想外の答えに頭を抱える。
( よりにもよって最も不遇な職業の召喚士なんてね……デスワームを操っていたからまだ、同じぐらい不遇だけどテイマーと言われる方が信じるわ……)
アリシアは続いてゼフの能力について聞き出すため、再度尋ねる。
「次に今召喚しているデスワームよりも強い魔物を召喚できるの?」
「できる、デスワームはかなり弱い部類だからな」
流石にそれは嘘と判断する。
「大体分かったわ。とりあえず、こちらからの質問は終わるわ。それと少し考える時間をもらってもいいかしら?」
「ああ、いいぞ。ゆっくり考えろ」
それから森を歩き、王都までの距離があと少しとなる。
それまでアリシアはこの男の対処法を考えていたが、彼女の頭ではどうすることもできなかった。
(あのことが嘘だとしてもこの男規格外ね。デスワームを三体倒すのはかなり骨が折れるわ……)
そんな事を考えていると、ゼフが口を開く。
「そろそろ街だ」
アリシアは顔を上げると、そこにはいつも見ていた高くそびえ立つ城壁が存在感を放ちながら佇んでいた。
「そうね、あなたは私から大切なものを奪った人だけどお礼は言うわ。ここまでありがとう」
アリシアは殺意を込めて礼を言う。
そして、念のために確認する。
「ただ……約束は守ってよ」
「ああ、守るさ約束は……だが、もし危害を加えたりするようなことがあればその者達を殺す」
「ええ、分かったわ。約束は守るのが王族ってものよ」
「森の出口だ。お前はここから一人で行け。念のためデスワームで王都付近まで護衛させよう」
「ええ、分かったわ。もう二度とと会わないことを願うわ」
アリシアはそう言い残し、デスワームに護衛されながら王都に向かっていった。
着いた時、衛兵が慌てていた。本当に彼女は王族のようだ。
ゼフはアリシアが王都に着き、騒ぎがおさまり、一段落したところで新たなる蟲を呼び出す。
「来い、ビートルウォリア」
そこに召喚されたのは人間の大人程の大きさを持つ蟲である。
体の立派な甲殻は光で反射し、頭にはカブトムシのようにツノがある。
目は人と同じぐらいの大きさだが赤く光っており、口は小さい。
そして、全身赤と黒が特徴的である。
「ビートルウォリア、俺を守れ。そして、俺が命令するまで誰も殺さずについてこい」
命令し、ゼフは王都に向かって歩き始めた。
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