第2話 思いがけない殺戮
「まずは探知の魔法で得た情報が真実かどうかだが……難しいところだな。もしかすると、技と情報を渡している可能性もあるし、隠蔽魔法を使って情報を書き換えている可能性もある」
ゼフはあらゆる可能性を考えるが、目の前にいる奴らは魔法なんて使っていない。
それが妙に引っかかる。
「流石に魔法を使わないのは、メリットが無さすぎだ。いや、だが……もしかして、ここは俺がいたところとは、別の世界なのか?」
ゼフは推測を立てるが、それには情報が乏しすぎる。
しかし、それならば魔法を使っていないこと、そして武器だけで戦っていることに納得がいく」
「それならば厄介だな……つまりは、あのアイテムに込められた魔法は俺が知らない未知の魔法ということだ……」
ゼフは溜息を吐き、目の前の奴らを観察する。
そして、どのタイミングでデスワームを投入するか考えるのだった。
✳︎✳︎✳︎
17人の男達、こいつらは所謂盗賊と呼ばれる人間だ。
略奪を繰り返すことで生計を立てており、今は豪華な馬車を囲んでいる。
護衛の兵士は全て倒しており、後は中にいる奴らだけである。
盗賊達がニヤニヤと笑みを浮かべてる中、一番偉いと思われる盗賊が叫び出す。
「護衛は全員殺した! 後はお前達だけだ! おとなしくしていれば痛い目はみないかもしれないぜぇ〜」
その言葉が余程面白かったのか周りの盗賊達が声を張り上げて笑う。
すると、一人の美しい女性が出てくる。
美しい水色のドレスを着ており、盗賊達はその姿に見惚れている。
「この馬車に乗っている他の人には手は出さないで。連れていくなら私だけにして、お願い……」
そう言うと女性は頭を下げる。
「お嬢さん、何か勘違いしてるみたいだが、俺達はこの馬車に乗っている奴らが、王族であると知っているんだぜ。逃がすと思うか?」
その言葉を聞いた女性は、全てを悟ったのか顔が段々と青くなっていく。
「さて、そろそろ終わらすか。野郎共捕らえろ」
盗賊達が女性を襲おうとした瞬間、地面が激しく揺れ始める。
その揺れは人が立つことを許さないほどに大きなものであった。
「なんだ!? この揺れは」
一人の盗賊が叫ぶ。
やがて、揺れがおさまる。しかし、地面が盛り上がり、そこからミミズのような化け物が鋭い牙を見せつけて現れた。
その大きさは地面から出ているとこだけでも五mほどあり、体長は二〇mを超えているだろう、それ程の巨体である。
「なんだ! この化け物は!」
警戒しながら周りの仲間に盗賊の頭は尋ねると、ゆっくり口を開く。
「まさか……」
「嘘だろ……」
「なんでこんなところにいるんだ……」
盗賊たちの返答はなく、絶望したような表情で呟いていた。
意味が分からない頭は叫ぶ。
「おう、お前らあれはなんだ! 答えろ!」
「あ、あれはおそらくですが……災害級の魔物てあるデスワームです、頭」
盗賊の子分は震えながらも答える。
頭はその答えに即座に命令を下す。
「災害級だと? それはまずいな、よしお前らここはしょうがねぇ、王族を囮にして逃げ――」
だが、その命令は最後まで続かなかった。
何故ならデスワームが地面から更に二体出てきたからである。
その現実離れした光景に、盗賊達は恐怖で動く事ができない。
「嘘だろ……三体だと……ありえない……」
頭は絶句する。
災害級でも一体なら逃げることはできるだろう。
しかし、三体となれば話が変わる。
チラッと視線をやると、子分達はかろうじて立っているが、涙を流している者が殆どだ。
そして、次の瞬間頭が簡単に捕食される。
それを皮切りに次々と盗賊達は捕食されていく。
「やめてくれ……頼む助けてください……」
「ぎやあああぁぁあぁ!!!」
叫ぶ者や、その場で祈る者、そんな彼らの命をデスワームは躊躇なく刈り取っていく。
そして、五分もしないうちにその場にいた盗賊達は姿を消した。
✳︎✳︎✳︎
ゼフの手持ちの中でデスワームは弱い部類だ。
だが、盾としてなら非常に使い勝手がいい。
何故なら、デスワームは即死級の物理・魔法攻撃を一度耐えるという能力を持っているからだ。
だが、所詮はその程度と思っていたのだが……。
「なんだこれは……弱すぎる……」
ゼフはデスワームが全くダメージを受けず、盗賊たちを殺してしまうとは思わなかった。
「確か災害級だったな……どういうことだ?」
ゼフは脳をフル回転させ考える。
その中で考えてしまう。もしかすると、この世界の奴らは大したことないのかと。
だが、それを判断するのは早い。単にこいつらが弱かっただけかもしれないのだから。
そんなことを考えていると、デスワームは残った王族達をも一人を除き殺しつくしていた。
「まずは情報収集だな」
ゼフはデスワームの近くでうずくまっている王族の女性に歩みを進める。
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