第21話
「まず行き先を決めなくては。
10日間で行ける場所となると限られてしまうが。」
「私はこちらの地理が全然わからないのでお任せします。」
「ファッション文化の栄えるお洒落な町と魚介類がおいしい港町と沢山の本や研究者が集まる魔法都市、どれがいい??」
「おいしい・・・。」
はっ!
このまますぐに港町を選んでしまっては凄く食い意地のはった女だと思われてしまうんではないだろうか。
ただでさえ食べ物のためにアイテムボックスを覚えたという前科があるのだ。
けどせっかくのゴールデンウィーク旅行なのに魔法都市で本読んだり勉強は嫌だし、ファッションは興味はあるけどお洋服を買っても華やかすぎて向こうでは着れないし。
やっぱりどう考えても美味しい魚介類一択なのだ。
ちらりとあおいさんを見る。
「私、こちらの世界の海を見てみたいです!
自然豊かで澄んでいて、綺麗だと思うんです!
せっかくのお休みなので綺麗な海を見て癒されたいです!」
「あぁ、おいしい魚介類を食べに行こう。」
バレバレだ。
これではただの食い意地がはった女だ。
「おいしい魚介類にも惹かれましたが、海を見たいのも本当ですからね!!」
「・・・ふふっ。あぁ。わかっている。」
全然わかっていない。
というかこんなに笑っているアオイさんははじめて見る。
顔を押さえプルプルしながら腹を抱えて笑っている。
そんなに私の食い意地はひどいですか。
「もう!こんなに笑うなんてひどいです!」
「・・・悪い。
こんなに自分の本心を隠せない者は周りにいなかったのでな。
行き先も決まったし、時間も限られている。
向かうとしよう。」
「港町はどうやって向かうんですか??」
「これから行くのは港町ロイヒテンデス。
このミラから馬車で3日ほど行った所にある。乗合馬車でも行けるが知らない人とも一緒になるし村を経由したりで時間がかかる。今回はミラで馬を借りて2人で向かおう。それなら2日ほどで着くだろう。」
馬車!!異世界っぽい!!
けど普通に日本で暮らしてきた私は馬車も馬も乗ったことがない。
「待ってください!私馬は乗ったことありません。」
「それはわかっている。
私が操作をするから一緒に乗ればいい。」
!?
一緒に?馬に??
同じ馬!!?
今時恋愛ドラマでもそんなシーンないよ!恥ずかし過ぎる。
「 馬車の方があおいさんもゆっくりできるんじゃないですか?
それに大人2人を2日間も乗せて走るなんて、馬がかわいそうですよ。ほら、荷物もありますし!」
「何を言っている。何のためのアイテムボックスだ。手ぶらも同然だろう。
それに馬と言ってもみどりが想像している馬ではないと思うぞ。」
「馬は馬じゃないんですか?」
「こっちには魔物が存在すると言っただろう。
馬もその類だ。普通の馬よりも大きくて頑丈だし、力もある。」
「そ、そうですか。」
「そんなに私と2人で乗るのは嫌か。」
「いえ!
大変かなと心配しただけです!」
「なら馬を借りに行くぞ。
早く行かなくては借りられる馬がいなくなってしまう。」
「・・・はい、わかりました。」
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