第27話『黄昏と銀星』
銀星は、
「——ミーム、こっちは仕事が片付いたぞ」
《かーちん、ウェブ上のデータの消去プログラムは自動実行されているなの。こっちもほぼ終わりそうなの。あとはボクが放っておいても、AIの画像言語認識機能によって関連したデーターも含めて、すべて再アップロードされたものも含めて自動的に削除されるだけなの》
銀星の黒パーカーのフードに取り付けられた小型スピーカー越しに、虚子の声が聞こえてくる。その声をを聴き、黄昏が銀星に一言だけ言葉をかける。
「銀星くん。そのマイクの先の女の子は、開現寺さんの家の娘さんかな?」
「——てめぇには関係ねぇ」
「そうですね——。ただ、私はそうだったら銀星くんにとって、良いだろうなと思っただけです。忘れてください。今日のことも、私のことも。お互いその方が、きっと良いのでしょう」
「クソが、言われるまでもねぇ。今日の今日までてめぇの事は完全に忘れてたぜ」
「……。そうですか」
銀星はこれ以上話す意思はないということを行動で示すため、黄昏には
「銀星くん——。」
入口の自動扉の前で黄昏は、銀星に声をかける。
「いつかまた——もし、良ければ、会いにきてくれますか」
「遠慮する。——さっさとクタバレ」
銀星は、後ろを振り向かずにその言葉を最後に部屋を出る。部屋に居ると黄昏に罵倒する言葉が、次から次へと頭の中でこだまするが、その言葉を口にした時には相手を自分の親と認める事になり、それが耐えられずに、部屋を後にする。
「ミーム。終わったぞ」
《——お疲れ様、なの》
パーカーのフード内のマイクを通して、銀星と黄昏の一連のやり取りをすべて聞いていた虚子は銀星にかける言葉はない。ただ、虚子は二人のやりとりを聞いてあまりにも寂しいなと感じたのであった。
外は、銀星の心象風景をあらわすかのようなどしゃ降りである。雨に降られながら、ビルの前に横付けしていたジープに向かった歩みを進める。銀星のすぐ横を誰かが通り過ぎた気がしたが、どしゃ降りの雨で輪郭が良く見えない。それに、通り過ぎた人間がだれであろうと、今の銀星にはどうでもよい事のように思われた。
そして、銀星は車に乗り虚子の家へと向かうのであった。
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