第17話『黒パーカーの少年②:外神田捜査』
銀星は『黒パーカーの男』の都市伝説の中心地である千代田区の外神田に立っていた。この地域は日中の人通りの多さとはうってかわって、夜には驚くほど人通りが無く静かでそして暗くなる。平日は8時~9時に閉まる店がほとんどだ。12時を過ぎてこのあたりを歩いている人間はほぼ見当たらない。ましてや、いまは深夜の二時である。
《かーちん、反応はこの近くなの。気を付けるなの》
「おーけー。それにしてもミームの言う通り、昼はあんなにごったがえしているのに、夜は人はほとんど居ないぜ。ひとけの多い場所が苦手な俺でも深夜の時間であればこの街を好きになれそうだ」
《外神田は新宿とかと違って、観光地の機能だけではなく、オフィス街、高級住宅街といった機能も併せ持った都市なの。そのせいか、騒音や治安悪化の原因となる可能性があるナイトビジネスがあまり推進されないなの》
「まぁ。俺みたいな引き籠りにとっては、夜に人が少ないのは快適そのものでしかないけど、海外の観光客が観光地として訪れた場合は夜に飲む場所が無いとか、結構がっかりするかもな」
《難しい問題なの。事実上この地域は、千代田区長が代表取締役社長として運営しているタウンマネジメント団体が方向性を決めているなの。タウンマネジメント団体への出資者は、観光産業や商業施設の人々ではなく、区民なの。だから出資者である区の住民の意見を最優先するなの》
「まぁ、区長であれば票田である区の住民の意見を最優先するのは当然。それに、出資者のいる営利団体であれば仕方ないか。それに、区民の総意はおいておいても、住人以外に長くこの街に居る人間ほど一見さんとか、観光客とか嫌う傾向あるみたいだから難しいよなぁ」
《そうなの……。街の方向性を創り出す組織が、観光や商業よりも住を優先する決定をしている事なの。だから、外からどうこう言っても方向性は変わらないなの。どちらが良い悪いというよりも、決まっていることなの》
「世の中ってのは、複雑だねぇ。まぁ……人通りが少ないおかげで、俺たちは仕事しやすいし良い事ばかりだけどね。深夜帯にやっている店が少ないっていうわけだ。しばらく、外神田を出なないように裏路地を回ってみる」
《了解なの》
銀星にとっても人が少ないフィールドで戦えるというのは非常にやりやすい。怪異との大立ち回りの最中に周りの通行人を気にしなくても済むのだから。銀星がしばらく裏通りを歩いていると、土嚢を思いきり叩いたような、よく聞きなれた鈍い音が聞こえてくる。音の発生減は数十メートル先にある芳林公園からである。
ここの公園は、夜の9時過ぎになると巨大な門扉によって一般人が入れないようになっているのであるが、それがまるで銀星を招き入れるかのように今は開いているのであった。
黒パーカーの少年の足元には、複数人の血まみれの男性。外目から見ても、手足を入念に破壊していることが分かるなぶり方であった。
黒パーカーの少年は、足元にいる男を踏み、上段からまるでバットにてすりばちで、ゴマをひき潰すかのように鉛バットのヘッド部分で、地面に伏した男の右手の甲を押し潰すと、ゆらぁりと銀星の方に振り向いた。
都市伝説『黒パーカーの少年』。その姿は、都市伝説の噂の通り、銀星と、背格好や顔は瓜二つであった。シルエットだけ見れば双子と言われても信じてしまうほどの同一性。
だが、この少年は髪は銀髪であり、瞳の色は日本人の標準的な黒みがかった瞳であった。その点では、黒髪碧眼の銀星とは異なる特徴を持った存在でもある。
「ミーム、
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