第8歩 新生パーティでの四島探索

「ベア、パード、ウルフ各一ずつ!」


「ベアは任せろッ!」

「了解」

「アオーン」


 タンバとの訓練を終え、五島の魔物の連戦も可能との判断が出た為、新メンバーに加わったユニス、そして、ソラとザックとライは、いよいよ本格的に五島での探索へ向かうべく四島で連携の確認を行っていた。


 ソラたちは、前衛のザックを先頭にソラとユニスとライによる遊撃。

 それに加えて、ユニスとライは遠距離攻撃も可能なことでバランスの取れたパーティとなっていた。


 ニコルが抜けたことにより回復魔法を扱えるメンバーはいないが、そこは魔法薬をイズレンデさんの薬屋で大量購入することで補っている。


 ユニスは五十センチ程のレイピアで遊撃をこなせ、それをタクトのように振るうことで火球を飛ばせる万能型。

 索敵もライが担うことで、ソラは結果としてパーティの指揮を執ることが次第に多くなっていった。


 自身の戦闘能力でパーティを引っ張っていくことはできなくとも、こんな立ち回り方もあるんだと、現在のポジションに充実感さえ覚え始めていた。


『グァガァグァァァア!!』


 ザックと一対一で相対するバーダントベアの咆哮が響き渡る。


『ガグルルゥッ』


 バーダントパードとバーダントウルフがライと睨み合う。


「ユニスはザックを遠距離で支援。場合によっては遊撃をお願い。ライは僕がフォローする」

「ん」


 短いながらもユニスの返事を聞き取ったソラは、自身の戦闘へと身を投入した。


 自身が担当するは、バーダントパードとバーダントウルフ。

 数日前であれば、単身であれば、自身の元へ引き付けておくことさえ難しい相手。


 でも、今は紋章を共にする友が一緒だ。

 それが何よりも心強い。


「ライ、行こうッ!」

「グラァァ」


 ライはソラの掛け声に応えるように鳴くと、バーダントパード目掛けて駆け出した。


 先制はライ。

 バーダントパードを捉えんと、まだ幼いながらもしっかりと生え揃った爪を振るう。


 しかし、そこは俊敏なバーダントパード。

 ライの爪先が自身を捉えるすんでのところでそれを回避すると、自分の方が鋭利だと言わんばかりに爪をき出し、サイドからライに襲い掛かった。


「ッハッッ」

『グルッガッ!?』


 が、そのバーダントパード横っ腹にソラが飛び蹴りを突き刺す。


 剥き出しになったバーダントパードの鋭利な牙の隙間から撒き散らされる唾液。

 それが自身の顔に掛かるもソラはお構いなし。

 飛び蹴りの勢いそのままにバーダントパードへと追い迫った。


 しかし、


『グルゥァア!!』


 蹴り飛ばされたバーダントパードを飛び越えるようにバーダントウルフがソラに牙を向ける。


 クロスさせた両手のダガーでその牙を受けたソラは、そのダガーを思いっきり薙いだ。

 その反動で前進していた双方は後ろへと後退。

 数歩の距離を空けて相対する形となる。


 睨み合う双方。

 一閃を交えてまた戦闘開始時の睨み合いへと戻った。


 いや、そんなことはない。

 ソラに蹴り飛ばされたバーダントパードより更に奥に回り込んでいたライ。


 それによって、ソラとライはバーダントウルフとバーダントパードを挟み込むことに成功していた。


 ジリジリと間合いを詰めるソラとライ。

 バーダントパードとバーダントウルフは隣り合わせになる程に後退。


 しかし、そんな不利な状況でも自身の生死を思考の埒外らちがいに置き、人族へと迫り行くのが新界の魔物。


 ライとは異なる貪欲なまでの人族への殺戮さつりく本能。

 その本能がバーダントパードとバーダントウルフの思考の中から死を逃れるという選択肢を消し去った。


 死なば諸共。


『グルゥァア!!』

『ガルグァア!!』


 バーダントパードはきびすを返すとバーダントウルフと共にソラへと襲い掛かった。


 どちらかがこの人族の首元に咬み付ければそれでいい。咬み殺せればそれでいい。

 殺戮の最中にライガーに殺されようとも、その牙は離すまい。

 

 そんな二匹の死を無視した特攻に、ソラはバックステップした。


 少し成長したと言っても恐怖が消えるわけではない。

 その恐怖がソラにバックステップを選択させた。


 という訳では、全くなかった。


 恐怖は当然ある。

 しかし、今は前を向いて突き進むんだという気持ちの方がそれに打ち勝つ。


 それ故のバックステップ。


「ライッ!!」


 ソラがそう叫ぶや否や、前方を包むまばゆい光。

 その光がバーダントパードとバーダントウルフを包み込む。


 ソラはそれを見届けることなく、足に力を込めてその光へと飛び込んだ。


 そう。その光はライの雷撃。

 雷撃を受けて一瞬動きを阻害されたバーダントパードとバーダントウルフは。


 光が収まった時には、ソラに首元を深く切り裂かれており。

 噴き出す紫紺の煙。


 勢いはそのままにソラを抜き去り、誰もいなくなった空間へと駆け続けた二匹は、前脚を折り。


 その場に突っ伏して動かなくなった。

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