第7歩 新メンバーとご対面Ⅱ


火球かきゅう

「火球」

「火球」


 計三発の火魔法により炭と化し完全に沈黙する花化はなばけ。


「ザック!うしろッ!!」

「任せろッ!」


 地面から顔を出す前にザックに串刺しにされる土竜どりゅう


 花化けと土竜との再戦は、ライの代わりにユニスが入るだけで本当に呆気なく。

 全く同じ流れを繰り返すだけで三度の連戦さえも簡単にこなせてしまった。


「先生。ソラとライが、へこんでます」

「まぁ、あれだな。頑張れ」


 ニコルの少し心配の色が加わりながらもそれを呆れが上回っているような声に、タンバが苦笑いを浮かべる。


 先日はあれだけ苦戦した五島の魔物を、ほとんどユニスとザックの二人だけで討伐できてしまい。


 ソラはザックに土竜の位置を教えるだけ、ライはニコルの膝の上でそれを眺めているだけで戦闘があっという間に終了してしまったのだから、それも当然かもしれない。


「火魔法が植物系の魔物に相性がいいのは確かだが、立ち回りや能力もここにいるメンバーの二回りは上手うわてだな、これは」


 そんなタンバの見立てに只々肩を落とすソラ。

 ライもニコルの膝上でうずくまって顔を隠す始末。


 しかし、そんな一人と一匹を気に留めるでもなく、ユニスは「モフモフ」と言いながらライの毛並みを整えていた。




「それで、今後も一先ずはこのパーティでやっていくとして。ユニスにライのこと明かしても良いのでしょうか?」


 引き続き、戦闘訓練を続ける三人を眺めながらニコルがタンバに尋ねる。


「何か引っ掛かることでもあるのか?」

「まだ二度しか会ったことがない方の紹介ですし。ユニスと会ったのもつい先日が初めてなので」

「いいんじゃないか?」


  真剣な面持ちでの尋ねたはずなのに、あっけらかんとした答え。

  ニコルは膝上のライを落としそうになるのを必死にこらえた。


「そんな簡単に判断して良いんですか?」

「お前ら子供がそんなに難しく考え込まなくてもいいんだよ」


 ニコルの問いに戦闘を眺めながらタンバが答える。


「ライの件はもう大人の問題でもある。俺とヴェグルで調査も進めてる。お前らは気にせず今できることをやればいい」


 そう言って、タンバは新しい煙草に火を着けた。

 子ども扱いされたことに頬を膨らませるニコルだったが、それ以上に大人の頼もしさにふっと気持ちが楽になったニコルであった。




「大きい」

「モフモフ」


 一応ライの変身姿をユニスに見せる可能性も想定して新界で訓練をおこなってみたものの、こうも簡単にご対面となると肩透かしもいいところだというように、ザックとソラが何とも言えない目でユニスとたわむれるライガーを眺める。


 自分たちより二回りは上手うわてシードル新界開拓者がパーティに加わってくれることは確かに心強いし、第二新界を目指す上ではこの上ない大きな一歩前進ではあるのだが。


 コミュニケーションに難があり、得体の知れないケットシーとの今後に不安と期待が半々。


 いや、不安でいっぱいのソラとザックであった。

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