第6歩 新メンバーとご対面Ⅰ

 クーに知り合いを紹介すると言われてから二日後の正午。

 ソラたち三人と一匹は神殿の中でクーの知り合いを待っていた。


 クーから得ている情報は、ケットシ猫人ーで後衛と遊撃がこなせるということだけ。

 単にケットシーと言っても、ここガレリアには数多くのケットシーがおり、本当に出会えるのかすら不安になってくる。


 後衛と遊撃が熟せるという情報から、体格は細身で小柄?武器は短剣か弓か杖か…?

 そんな風に三人で予想を膨らませるも、不安は大きくなるばかり。

 

 しかしライだけは、様々な容姿のシードルが近くを通るたびにキャンキャンと物珍しいものを見るのを楽しんでいるように尻尾を振っている。


 これじゃあ本当に珍種の飼い犬にしか見えないなぁと、微笑ましさの込められた息をつきながらライを横目に見るソラ。


 しかし、ソラがニコルとザックの方に視線を戻した瞬間、急にライの鳴き声のする位置が高くなった。

 ライの楽しんでいるような鳴き声にも一層磨きが掛かる。


 その様子に何事かとソラが視線をライの方に向け、それに合わせてニコルとザックも視線を向けると。


「モフモフ」


 そう言いながら、一人の女性がライを抱き上げていた。


「モフモフ」


 女性は言葉を繰り返す。


「えーと……。」


 急な出来事にソラを始め三人が戸惑っているも、女性は気にする素振りもなくライを抱きかかえてモフモフにご満悦のご様子。

 その様子に只々固まるソラたち三人。


 小柄でおっとりした容姿ながらも、ノースリーブの戦闘用ジャケットとショートパンツに身を包み、腰のホルダーにはソラの小太刀の鞘より一回り長めの鞘が携えられている。


 そんなちょっとちぐはぐな雰囲気を持つ女性は、一頻りライをモフモフするとソラたちの方を見た。


「クー」

「?」


「クー」

「???」


 モフモフを二連続の次はクーを二連続。

 口にするのはモフモフとクー。只それだけ。


 なんかよくわからない人の絡まれてしまったかも。

 不安を抱えている中に更なる不安要素が加わり、ソラは引き続き固まってしまった。


 しかし、そこは流石のニコル。今のやり取りだけで相手の意図がわかったようで。


「もしかしてクーさんの知り合いの方ですか?」


 と、その女性に尋ねた。

 すると、コクリと頷き、


「紹介」


 と言った。


 短いながらもやっと言葉らしき言葉を得て、固まってしまっていたソラとザックもハッとして、意識をあるべき場所に戻す。


 よく見ると黒髪の上には同じく黒色の猫耳が二つ、ちょこんと寝ている。


 この人、ケットシーだ。


 ソラはそこでやっと目の前の女性がクーさんの知り合いのケットシーだと気付いたのだった。




「私」

「ユニス」


 それからも単語しか話さないケットシーの女性に四苦八苦。


「今日」

「探索」

「新界?」


 ニコルの頑張りによってユニスという名前と今日どうするの?という疑問を持っていることだけはわかり、一先ずケットシーのユニスには待ってもらい、三人で小声の臨時会議を開催した。


「とりあえず、戦闘の連携を確認してみるしかないんじゃない?言葉での連携は難しそうだけれど」

「なら今日は顔合わせだけにして、明日にでもタンバ教官に訓練をお願いしてみるか?」


「うーん。そうだね?」

「なんでソラは疑問形だ」


「だって。前途多難なのが明らかだし…」

「そりゃライが来た時からわかってたことだろ」


「うう。そうでした」


 そんなこんなで、その後もまた時間をかけてユニスとコミュニケーションを取った三人。


 ライの正体を明かすのは一先ず保留として。


 ソラとザックとユニスの三人での訓練をタンバに依頼し、今日のところは解散したのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る