人界と新界の魔力【読み飛ばし可】

 魔力は自然界の全ての物に宿っていると言われているけど、人界と新界のそれでは濃度に雲泥の差がある。


 人界に宿る魔力の濃度はとても薄く、新界と繋がるまでは生活魔法程度でも奇跡と呼ばれたくらい。


 魔力を使うという考え方は人々の生活に馴染みのないものだったらしい。


 それが、今では生活の基本が衣食住と言われるまでになっているのだから、新界の出現が人界に与えた影響の大きさがわかる。


 人界で使う魔法の性能も新界で使う魔法に比べると魔力の濃度に比例して格段に下がる。


 そして、魔力の補給にも新界に比べて何倍もの時間が掛かるので、人界では魔力を極力消費しないことが求められる。


 しかし唯一ゆいいつ、人界にあって人界の常識から外れているのがゲートのある神殿。


 ゲートを通じて新界から魔力が漏れ出しているのか、魔力の濃度が新界と同程度に高いらしい。


 それについては、ザックとニコルも神殿の中と外では魔力の濃さが全然違うと言っていた。


 恥ずかしながら、僕には神殿の中はちょっと空気が澄んでる?程度にしか違いがわからないんだけど。。。


 あと、神殿が人界で唯一魔力の濃度が濃いこともあってか、神殿内には人界を守る為に様々な魔法が掛けられているらしい。


 その中で僕が知ってるのは、上級の浄化魔法。


 これは新界特有の流行病が人界に持ち込まれるのを防ぐ為に聖者せいじゃと呼ばれる上級術者が複数人掛かりで発動していて、その魔法を神殿内の至る所に刻まれた彫刻などが増幅、維持しているらしい。


 この浄化魔法のお陰で未だに新界の病気が人界で流行ったことはなく、新界で命に関わる様な病気に掛かった人でも神殿で数日も療養すれば助かるという話を聞いた時に、神殿内の無駄に凝った彫刻は無駄じゃなかったんだって知ったので、この魔法については忘れずに覚えてる。


 ただ、新界に滞在するとなると話は別で、病気には勿論もちろん気を付けないといけない。


 特に、特定の魔物に噛まれたり体液を摂取してしまったりした場合、人界に辿り着く前に息を引き取るシードルも少なくないと聞いた。


 魔物の脅威に加えて病魔の脅威もある新界。


 それでも多くのシードルは自分たちの限界に近い深さまで新界を進み、そこに長期間滞在する。


 僕たちも今はまだ背嚢はいのうがいっぱいになったら帰路についているけど。

 十分に成長したら収穫の量に関わらず進める一番深い場所でできる限りの期間滞在するつもりでいる。


 まぁ、当分は長期間滞在するにしても無理をしない程度の場所での滞在になると思うけど……。

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