新生パーティ

第4歩 テイマーとは!?

「そこまで」


 タンバの声でソラたちに襲い掛かろうとしていた魔物の進行がピタッと止まる。


 魔物は踵を返すと、タンバの元へと戻っていき。

 トプンと影に沈んだ。


 すると、二つの魔石がコロンと現れ、それをタンバが小石を拾う様に片手で拾い上げた。


「このパーティだと五島の魔物相手に連戦はまだ無理だな。ニコルはどう思う?」

「…そうですね。わたしも先生と同じ意見です」


 タンバとニコルに断言されてしまった二人と一匹。

 呼吸で上下していたソラとザックの肩は一気にしゅんと萎み、ライはそんな二人を見てクーンと鳴いた。


「今日の午後からテイマーについて話を聞くんだろ?五島への挑戦はもっての外。まずはそっちを片付けてからだ」


 タンバが言うように、今日は午後からヴェグルの紹介でテイマーに所縁ゆかりのある人と会うことになっている。


 四島から帰った次の日にタンバに四島探索のあらましを伝えたところ、二人と一匹のパーティでどこまでやれるかを新界の一島で見て貰えることになり、訓練をお願いしていた。


 結果はご覧の有様で。

 新パーティの連携を強化するか、追加のメンバーを補強するか……。


 なんにせよ、現状のままでは五島に向かっても一日も持たずにリタイア。

 それ以前に、四島でも連戦に耐えられるか疑問を残す結果となってしまった。


 タンバと別れた後にソラとザックは服を着替え、ニコルと角の生えた小型犬の姿になったライと一緒に、ヴェグルのセクトへと肩を落としたままとぼとぼと歩いていった。




「よろしくお願いします」

「おう。まぁ座れや」


 ソラたち三人がソファに座ると、ヴェグルは隣に座っていた女性を紹介してくれた。


「この人がうちセクトの副団長様だ」

「ヴェグル。その紹介はやめてと言ったはずです」


 女性はヴェグルにそう言うと、ソラたちの方に向き直って咳払いを一つ。


「まず、はじめまして。私はサリヴィア=オルナイトと言います。私のことはサリーと呼んでもらって結構です。肩書きや年齢の違いでそれが難しければサリーさん、でお願いします」


 ポラリス副団長のサリーはそう言うと、優しく微笑んでくれた。


「では、サリーさん。はじめまして。ザック=ライハートと申します。この二人はニコル=ステイラとソラ=サーシュ。ザック、ニコル、ソラとお呼びください」

「よろしくお願いします」


 ソラたちはサリーと簡単な自己紹介を済ますと、早速サリーからテイマーのことについて聞き始めた。


「私はテイマーではありませんが、過去に長い間テイマーとパーティを組んでいたことがあります」


 そう言うとまた一つ咳払いをして、サリーが続ける。


「なので幾つかは知っている情報をお伝えできるとは思いますが、そもそもテイマーはガレリアには少なく、必要な情報はお話できないかもしれません」

「テイマーってガレリアには少ないんですか?」


 魔物との契約者なのに?と、サリーの言葉にソラの口からふっと疑問が出る。


 そして、自分で言っておいて、その答えに気付いてしまった。


「ふふ。その顔はお気付きのようですね」


 そう言ってサリーが笑う。


 笑われたソラは照れ隠しにニコルとザックを見たが、ザックは答えに気付いていなさそうに首を傾げたので少し安心した。


「そうです。あなた以外に新界の魔物のテイマーを私は知らないのですよ」


 丁寧で優しいサリーの口調。


 セクトにさえ所属していないランクⅠファーストのシードルが厄介ごとソラとライを持ち込んで来たにも関わらず、この余裕は流石ポラリス一流セクトの副団長と言うべきか。


 そんなサリーの対応に、ソラは「ははは」と笑うしかできなかった。


「ご存じの通り、新界の魔物に人族への敵意を持たない個体はいません。いや、いませんでした」


 ソラたちは引き続きサリーの質問の答えに耳を傾ける。


「なので、基本的にテイマーは人界の魔物と契約しています。その為、新界での戦闘に参加させられるような魔物と契約できていること自体が稀なのです」

「なるほど」


 ザックはようやく話の意味を飲み込めたようで。

 そんなザックをニコルはいつものジト目で見ていた。


「だから、お伝えできる情報は人界の魔物と契約して新界を探索した私の友人の話だけなのですよ」


 その後はサリーに、友人のテイマーの話や三人と一匹の今後の身の振り方のアドバイスを聞かせて貰って、ミーティングはお開きとなった。


 ソラたちの四島での経験談はというと、既にヴェグルから聞かせてもらったとのことで、少しの確認だけに留めてくれ、逆に『新界の魔物に人族への敵意を持たない個体がいるか調査するので、進展があったら教える』とまで言ってくれた。


 終始萎縮していたソラと、新界の魔物の敵意について気にしていたニコルへの気遣いだろう。


 やっぱり一流の人は違うなぁと、心の中で独りちたソラだった。

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