第9話 魔力測定
「そういえば、既に魔法を使えるザックやニコルはどんなアドバイスを貰ってるの?」
その後も二人が僕を励ますように続けてくれた身体強化についての話題が一区切りついたところで、僕は二人に訊いてみた。
「俺か?俺は、そうだな。俺が使えるのは土魔法だが、使える魔法の中でどの系統の魔法に伸び代がありそうかってところを中心に見て貰ってる。土魔法と言っても色んな系統の魔法があるからな」
「わたしは風魔法だけど、まだ使えない系統の魔法の中で相性が良さそうな魔法を教えて貰ってる。回復系以外はバリエーションが少ないから」
「そっかぁ。ザックとニコルでも貰うアドバイスの内容が違うんだね」
「そうね。上級の人たちなんか、魔法測定の担当官と一緒に新しい魔法の構築を
「まぁ、あれだ。要するに人それぞれってことだ」
「へぇー。すごいなぁ」
魔法という無限の可能性を秘めた因子が目の前にあるのに、まだアドバイスを貰うことすらできていない僕には、やっぱり二人がちょっと羨ましかった。
「で、だ。今までの話を
少し脱線したり寄り道したりした話題を、ザックが当初の路線に戻す。
「そうね。次の探索で各自課題を明確にするってことで。ソラは魔法を使う感覚を掴むのを次の探索の裏目標にしても良いかもね」
と、ニコル。
「魔法を使う感覚を掴む、か。うん!頑張ってみるよ」
駆け出しの僕には魔法以外にも覚えなきゃいけないことが山のようにあるからって、今まで使えない魔法のことは二の次、というか、見ないふりをしてきたけど。
目標として明確に言葉に出してみると、さっきまで胸の中で膨らんでいた下向きな感情も、徐々に晴れて。自然と次の探索が楽しみになってきた。
「魔法測定の為にも、四島の探索では沢山お金を稼がないとね」
「ははは。やること山積みだ」
「うっし。頑張るかっ!」
決意を新たにした僕たち三人の声は、いつのまにか大きくなっていて。
三人の会話が終わるのを待ってくれていたんじゃないかというように「おまたせしました」と、ちょうど会話の切りの良いところで職員の女性が順番がきたことを伝えに来てくれたので。
僕たち三人は慌てて席を立って、女性の後をついて行った。
魔力測定のブースはパーテーションとカーテンで区切られた簡易なものだけど、数人が寛げる程度の広さはある。
職員の女性に
ブースの中心には大きな球体の
「では、手前の方からどうぞ」
職員の一番近くにいたザックからニコル、僕の順に魔力測定を行っていく。
測定の方法は至って簡単で、魔道具に手を乗せ、目を閉じて極力動かない様に測定が終わるのを待ち、職員の合図で目を開けて魔道具から手を離す。
ただそれだけで終わりだ。
測定結果は数値で表され、測定後すぐに職員が口頭で教えてくれる。
今回は期待していただけあって、三人とも前回の測定から数値が上昇していた。
こうやって努力の結果が数値で定量的に表れてくれると、ちゃんと成長しているというのを実感できて頑張り甲斐がある。
数値の指標としては、100が身体強化状態で丸一日走り続けたり、中級魔法を主な戦闘手段としても魔力切れを起こさない魔力量。
200となると数日間ぶっ通しで走り続けたり、上級魔法を使った戦闘を行ったりしても魔力切れを起こさない魔力量と教わった。
僕の魔力量はやっと50を超えたくらい。
少しの差ながらザックの魔力量は上回っているので、
まぁ、走り続けるにはそれなりの体力が必要だし、魔法も魔力があれば使えるという訳ではないんだけど。
だから、魔力量以外にも鍛えなければいけないところは山の様にある訳で。
―― 数値が延びたことに浮かれず、これからも人一倍努力しないとな ――
僕は心の中でそんな小さな決意をしながら、職員の女性に挨拶をしてブースを後にした。
その後、僕たちは換金所に戻ってお金の受け取りと預け入れを済ませ、神殿を出た。
神殿を中心に広がる庭園を抜け橋を渡り防壁を
「じゃあ、今日はこの辺でお開きとするか」
「そうね。明日もある事だし。二人も夜遊びせずにちゃんと休むこと」
「大丈夫。僕はそんな元気ないから。ザックはわからないけど」
「俺も
人々が多く行き交う街並みを目の前に、そんな会話をして二人と別れた。
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