第6歩 神殿と可愛い?門番様
先程までの会話もあってか、ぱんぱんに膨らんだ
僕は ― もう一踏ん張り ― と、背嚢の肩紐に添えていた両手にグッと力を込めて背筋を伸ばし、しっかりとした足取りで歩を進めた。
そして、ゲートを潜ると。
神殿と名付けられてはいるけど、特定の神様が
未だに全く成り立ちのわからないオーパーツであるゲート、
元々は古代遺跡だったけど、月日が経つにつれて神格化されていき。
ゲートを覆う建物の建設が決まるや否や、神様を祀る予定などないにも関わらず神殿と呼ばれるようになった為、建物の名称に神殿の名が付いたそうだ。
神殿の中央には、僕たちが
そんな空間の中では、今から新界に出発するシードルや僕たち同様に新界から戻ってきたシードルの他にも、多くの人たちが仕事に従事している。
例えば、各ゲートの前方に設置された小振りな受付に座る、髪型や髪色は異なれど、異なる箇所はそれ以外に無いと言っても過言でないくらい瓜二つ、いや、瓜五つの女性たち。
「おかえり、ニコル。私の可愛いニコル。六日と三刻半も新界に
「ラズ、ただいま。擦り傷ひとつないから安心して」
「そう。ニコルに怪我がないのならそれで良いの」
ニコルからラズと呼ばれた第一新界のゲートの受付に座る女性が、ニコルの返答に大げさに胸をなで下ろす仕草を見せる。
「ラズさん。お疲れ様です」
「あら、いたの?えーと。名前は忘れてしまったのだけれど、お疲れ様」
ニコルと話していた時には豊かだったラズさんの表情は僕を
「あなたたちに限って、それはないでしょうに」
「何か言った?」
「いえ。何も」
ザックに至っては、隣にいる僕にも聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でボソッと発した呟きに対し、ラズさんに冷たい笑顔で聞き返されてしまい。
それ以降、ニコルがラズさんと話している間中ずっと僕の後ろに下がって縮こまっていた。
そんな、ザックを一言で縮こまらせたこの人は、ラズ=ウィザードリィさん。
青みがかったピンクのショートヘアに小柄で童顔な容姿から可愛らしいという言葉が良く似合うけど、僕たちには可愛らしいなどと口が裂けても言えない第一新界ゲートの門番様である。
第一新界から第五新界までの全てのゲートの受付兼門番をラズさんたちウィザードリィ姉妹が担当しているんだけど、
ラズさんたちについての詳細は全くもってわからない。
ザックがボソッと呟いた様に、ウィザードリィ姉妹の記憶力は全員が全員ずば抜けており、シードルの名前から担当ゲートの通行可否、どれくらい新界に滞在して戻ってきたか、果ては、数年前にした会話の内容まで全て正確に記憶しているという噂だ。
また、一人一人が相当な実力者なのに、姉妹で連携すると並みのシードルが倍以上の人数で束になっても太刀打ちできないレベルで強いので、重要職であるゲートの門番を任されていることに対して異論のある人はいない。
というか、異論があったとしてもウィザードリィ姉妹の前では誰も口に出すことができない。
そんなこんなで男二人が萎縮している中、ニコルが「では、また」と言ってラズさんとのおしゃべりを終えたので、僕とザックもペコっと頭を下げて逃げるように受付を離れた。
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