第33話 あらやだ! やっぱりぴったりだったじゃない!

 ヨシエさんが、私にぴったりの見合い写真を持ってくると言って消えてから30分が経った。


 この30分の間に少し冷静になっている自分がいる。


 まぁ、プラスに考えれば、よ。

 別に写真を見るだけなら良いんじゃないかな、って思い始めて来たのだ。

 それにほら、嘘かほんとかわからないけど、30組くっつけてるんでしょ? もしかしたら、その分野においてはすごい人なのかもしれない。おせっかいおばちゃんっていうの? 昔はそういう人がいたもんだって親戚のおっちゃんが言ってたっけ。


 と。


「はぁ~、よっこらせっとぉ」


 という声が聞こえてきた。

 いつの間にか目の前にいたヨシエさんは、私に向かってその小さな――いや、ヨシエさん的には大きいんだろうけど――写真を差し出してきた。「どうも」と一応お礼を言って、開こうとすると、「ちょい待ち!」と止められる。


「何ですか」

「あのね、開く時は気を付けて」

「は? 何でですか?」

「何でもよ。とりあえず、ここでは駄目」


 と、テーブルを指差す。


「じゃあ、どこで開けば良いんですか?」

「そうねぇ。んじゃ、まぁ、そっちの床で。広い方が良いわ」

「はぁ、わかりました」


 広い方が、って……。もしかして、開くと大きくなるとか? でも、大きくなって、私のサイズになるとしても、えーっと、A4? いや、広げるからA3かな? とにかくまぁそれくらいでしょ? 別にそんな広い場所が必要にも思えないんですけど。


「じゃあ、開けますね」

「はいはい、どうぞどうぞ。ヨシエさんの真の力に震えるが良いわ、みくちゃん」

「何を大袈裟な。――って小さいと開けるの逆に難しい!」


 表紙と表紙のわずかな隙間に爪をひっかけて、よいしょ、と開くと、その小さなお見合い写真から、ぼわん、と白い煙が出た。

 

 どう考えてもこのサイズのものから出ているとは考えられないほどの量である。何せ視界が全部真っ白になるレベルだ。


 あのババァ、何が真の力だ。とんでもない細工しやがって! 浦島太郎か、私は!!


「ちょっともー、ヨシエさん! 何てことしてくれるんですか! いたずらもいい加減にしてください!」


 と、窓を開けて煙を逃がし、テーブルの方を振り向くと、そこに――、


 コウちゃんがいた。


「ほぉ~ら、やっぱりぴったりだったじゃない! アーッハッハッハ!」


 テーブルの上で、仁王立ちでどや顔をしているヨシエさんが、そんなことを言って、笑っている。


 ヨシエさん、うるさいです。

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