第25話 あらやだ! みくちゃんってば罪な女だわぁ。
「ちょっと、コウちゃん、どうしたの?」
「うう……僕は、僕は……」
「あーらら、こぉーんな良い男泣かせるなんて、みくちゃんも罪な女ねぇ~」
うるせぇババァ!! イワネ屋はどうした!! クソッCMか!!
コウちゃんはキャベツをもそもそぱりぱりとかじりながら、涙をぽろぽろと流している。ちょっとちょっとどうしたのよ。
「僕がいない方が、みくちゃんはちゃんと出来るんじゃないか……。僕の、僕のせいだったんだ……。ごめんね、みくちゃん……」
「えっ、それは……」
違うよコウちゃん。どちらかといえば、このうるさいトド……じゃなかった小さいおばさんのお陰っていうか……。うるさくて、ちょっとむかつく人(人?)だけど、でも、確かにヨシエさんがいなかったら、私はたぶんいまも全く変わっていなかったはずだ。
あー、でも確かにきっかけとしてはコウちゃんが出てったのも関係してるのかな?
「えーとね、コウちゃん。確かにきっかけはコウちゃんと別れたことではあるんだけど……」
そう言うと、コウちゃんは、ぐずっ、と鼻を啜った。ヨシエさんがお尻でティッシュ箱を、つい、と押す。ちょっと、お尻は止めて。
「……? いまこのティッシュ動い」
「気のせいじゃない?」
「気のせいかなぁ?」
「気のせいだよ。あともしかしたら、私の念力とかかも。ええい! なぁんちゃって!」
「あはは、すごいね、みくちゃん」
そんなわけはないのに、コウちゃんはあははと笑ってティッシュを取り、ずびーっと鼻をかんだ。
もう全く、余計なことしないでよね、とヨシエさんを睨むと、彼女はどこ吹く風、と私達にお尻を向けてイワネ屋を見ている。アラフィフのベテラン女優とアラサーのイケメン俳優の熱愛スクープだ。えっ、うっそ、
って、私も注目してどうする。
「あのね、コウちゃん。私、コウちゃんがいなくなってやっとこのままじゃヤバいんだなって気付いたんだ」
「そうだったんだ」
「でも、掃除も洗濯も全然まだまだだし、料理も……正直まだこの程度だけど。他の人はもっとちゃんと出来るだろうし」
そう、自分にしてはかなり頑張った感じになってるけど、本当は全然すごくなんかない。
だけど――、
「そんなことないわよ」
お尻を向けてテレビを見ていたはずのヨシエさんが、首だけをこちらに向けて、私をじっと見ていた。
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