第23話 みくちゃん、遭遇する

「あれ……、みくちゃん?」


 タニヤマートでキュウリとキャベツ、ごま油や塩昆布などなどを買い、家へと歩いていると、後ろから声をかけられた。


 聞き覚えのあるその声に振り返ると、そこにいたのはコウちゃんだ。コウちゃんの仕事は土日に出勤する代わりに平日が休みになる。今日は休みなのだろう。

 コウちゃんはレジ袋の中をちらりと覗き込むと「えぇっ?!」と驚いたような声を上げた。無理もない。どれもこれも、かつての私なら絶対に買わなかったものだ。


「もしかして、みくちゃん、料理するの?」

「えっ……と、まぁ、ちょっとだけ。れ、練習っていうか」


 別にやましいことをしているわけじゃないのに何だかしどろもどろになってしまうのは、コウちゃんと一緒に暮らしていた時はそんなことをしようなんて微塵も思ってなかったからだ。


「ええと、それってもしかして、た、例えば新しい『彼』とかの為だったり……?」


 びくびくと、何だか探るような視線で問い掛けてくる。

 何、もしかしてまだ脈ありだったりする?


「まさか。そういう人いないもん」

「そ、そうなの?!」


 やっぱり。

 何かちょっとホッとしてる。


「本当に大したものじゃないけど、食べてく?」


 そんなことを言ってみると――、


「い、良いの?!」


 って、コウちゃんは乗り気だ。

 

 もしかしてイケるのかも?


 そう思って、私はコウちゃんと共に、かつての私達の愛の巣へと帰った。


 まぁ、ヨリを戻す云々というよりは、私の名誉っていうのかな、そういうのを取り戻したかったっていうか、コウちゃんと別れたからってさらに自堕落な生活をしていると思われたくなかったっていうのもある。


 そう思うってことはやっぱり私はまだコウちゃんのことが好きなのだろう。


 ヨシエさん、気を利かせてくれたりしないかなぁ。


 なんて思ったりもして。



 

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