第21話 あらやだ! 最初は下手な方が良いのよぉ~?

「あら! ちょっとちょっと、明日は雪かしらぁ~?」


 とりあえず、皮を剥く必要のないキャベツを使った料理に挑戦してみよう、と、タニヤマートで、『キャベツだけで出来る!』系のお惣菜の素を買って来た。


「こ、これくらいなら私だって……」


 そう、私だってそろそろ何か出来ないとヤバい。

 あの旦那さんだって『cookクック goodグー!』で文句言わないんだもん。それにコウちゃんだって混ぜるだけのやつでも良いって言ってたし。せめてこれくらいは。


「あらあら、そのまま包丁を下ろせばみくちゃんの指がなくなっちゃうわねぇ~」

「えっ?! あ、ほんとだ!」

「ちぎれば? いっそ」

「え?」

「良いじゃない、一口大の大きさならなんだって良いわよ。バリバリちぎりゃいーいーのっ」

「でも……」

「いーのいーの。こういうのはぱっぱと作れるのがウリなんだから。ほぉーれ、ちゃっちゃとちぎるちぎる~!」

「は、はい」


 とりあえず自分が食べやすい大きさにちぎる。一口大って何ぞや、という私の問いに対しても「適当よ、適当。一口で口に入れば良いのよ」とヨシエ節。まぁ確かにそうかも。


「料理っていうのはね、最初が肝心なのよ」

「最初が?」

「そ」


 ちぎったキャベツをさらに小さくちぎりつつ、それにぱっぱと塩を振って、ヨシエさんはそれをぱりぱりと食べている。


「最初に良いとこ見せようとして頑張っちゃ駄目なのよ。――みくちゃん、ごま油ちょうだい」

「ごま油? はいどうぞ」


 ガスコンロの脇にあったごま油を手渡すと、ヨシエさんは「ちょっとぉ、小皿に入れてよぉ」と言ってキャベツを振った。


 くそ、いちいち面倒なおばさんだ。


 しかし、これでも一応私の料理アドバイザーだったりするのだ。癪だけど。むかつくけど。


 小皿にちょびっとだけごま油を垂らしてやると、ヨシエさんはそこにキャベツをちょいちょいとつけ、それを、ぱり、とかじった。


「どうせ毎日作りゃ嫌でも料理なんて上達するんだから、最初は下手で良いの。それに新妻が作ってくれたもんはだいたい何でも美味しく感じるものよ。ほら、みくちゃんもやってみ、塩キャベツ」

「はぁ。――あれ、結構美味し」


 ちぎったキャベツに塩とごま油だけなのに。


「ごま油は魔法の油なのよねぇ~。これでお肉焼いて塩コショウぱっぱ~でも立派なおかずよ」

「そうなんだ」


 何、料理って案外簡単だったりする?


「あとまぁ……、みくちゃんがちゃんとお肉を焼けるか、よねぇ」


 あっ。

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