第13話 あらやだ! 心臓に悪いクッキングだわぁ~!
で、買い出しを終え、調理実習以来となるカレー作りが始まった。
「あらっ、あらららららら……! これは、んマー! あららららららら!!!」
もうさっきから、ヨシエさんがあらあらしか言ってない。
玉ねぎは何とかなった。
だけど、問題はにんじんとじゃがいも。こいつらの皮は手で剥けない。
「それじゃみくちゃんの指が何本あっても足りないわぁ」
包丁を構えると、そんなことを言われた。
ヨシエさんがコウちゃんの愛用していたピーラーを発見し、凹凸の少ないにんじんはそれで何とかなった。
しかし、じゃがいもである。
こいつは凹凸が激しくて、どうにもうまく剥けないのである。
「だからメークインにしとけって言ったのよ」
「だって、コウちゃんはいつもこういうの買ってたから」
確かに売り場では「そっちよ! そっちのメークインにしときなさい!」って耳元で叫んでたっけ。だけど、コウちゃんが買ってくるじゃがいもはこういうごつごつしたやつだったのだ。
「仕方ないわねぇ。そのじゃがいも、良く洗って、ラップに包んで、レンジでチンしましょ」
「ええ? 皮付きのまま?」
「良いから、あたしを信じて!」
「わ、わかりました……」
と、調理台の上でやっぱりおせんべいをかじっているヨシエさん……いやヨシエ先生の言うとおりにラップに包んでレンジに入れる。
そして、数分後……。
「あっち!!!!!!」
「ちょ、ちょっとみくちゃん!!!」
熱々のじゃがいもを素手でつかもうとして、あまりの熱さにそれを投げてしまった。ほわほわと湯気をあげながら、ラップの破れたじゃがいもが、三角コーナーの中へイン!
「……よ、ヨシエさぁん」
「だ、大丈夫よ。皮を剥けばセーフ、セーフだから! あたしだってこれくらいよくやるわよ! ね? 泣かない! 泣かないのよ! みくちゃん!」
「うわぁぁぁぁぁん!!!」
「あらやだ、良い年した大人が……。よしよし」
やる気も自信も全部なくして泣きながらふて寝すると、いつの間にかヨシエさんはいなくなっていて、その代わりに美味しそうなカレーの匂いが漂ってきた。
「ヨシエさん……」
いつもゴロゴロしておせんべい食べながらおならしてるイメージしかなかったけど、やっぱり主婦なんだなぁ。
ちょっとだけヨシエさんを見直して、そのカレーを食べた。
……にんじん、まだ硬いんですけど。
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