6冊目

「………死神ぃ?」

思いもよらぬ方向から答えが飛んできて、素っ頓狂な声が出る。


「てっきりそういうもんだと。………そんなにおかしいですか」

と、僕が笑っていることを訝しむように尋ねてくる。面白いくらいに、眼鏡の奥の瞳が澄んでいる。______いや、勝手にそう錯覚しているだけなのかもしれない。


1人脳内で会話をして、そこで藍を待たせていたことに気付く。


「ふふ、ごめん。おかしいよ」

そう言われた彼女はどこか納得できない表情を浮かべている。お菓子でもあげたら昔みたいに笑ってくれるだろうか。


「もっとこう……幽霊とか、そういう日常的っぽいのあったでしょ」

「……………え、幽霊なんですか?」

予想外だった、という顔をしている。問うてみたは良いものの、実際のところ自分でもよく解っていない。

いや、解っているけど、もう少し解りたくなかったなあ、なんて。


「うーん………まあ、そうなんじゃないかな」

「ええ………。」


実際のところ、僕の正体よりも今は此処の意味を考えて欲しいんだけど、なんていう台詞を言うつもりは無くなった。どちらにしろいつか気付くことを祈りつつ、話題を切り替える。


______として、言ってあげたかったこと。してあげたかったこと。僕とまっさらで真っ白な壁の後ろに広がる、美しい空間を指差して。



「それよりさ、今日は星が綺麗なんだよ。望遠鏡が活躍できる。………一緒に見よう?」

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