5冊目

「見てた………って、ミノルさん……あの時、居たんですか?」

「あー、何ていうか………まあ、多分………君が思ってる事とは違うと思うよ」

僅かに考え込んだ後にはっきりしない言い方をされては、此方こちらとしても気になってしまうものである。


「……というと?」

「…………まあ、その………天井付近から見てたというか?」

「………っは?」


不審者だとか忍者だとか、幾つかのパターンが思い浮かんだけれど、

彼が告げたのはそれには一切当てはまらない答えだった。


「………ちょっと、考えてみて。お祖父じいさんって、病気を持ってたりして

亡くなることが現実的だった訳じゃないよね?」

「………まあ、そうですけど。………ほんっと、急だったし」

何度も思い出させないでよ、という感情は喉元でこらえて、ひとまずミノルの正体の考察に専念することにする。


「……で、それがどう関係があるっていうんですか」

「………じゃあ逆にくよ。どうして、約束が守れなかったっていう会話ができたんだと思う?」

言われてみれば。____うちのお祖父ちゃんは優しいのに変な所が頑固だから、

あまり考えたくはないけど最後の最後まで絶対そんな事は口にしない。

そもそも忘れかけていたけれど、この場所だって現実か判らない。

っていうか、天井付近からって何なんだ。飛んでたのか。


…………飛ぶ?




「………………え、嘘………もしかして」


夏にぴったり、なんて冗談は言えない。


_______彼は。

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