4冊目

「………!」


望遠鏡と星空。さらに情報が加わったことによって、

そのうち疑問が解決することに期待して遂に考えることを意図的に放棄する。


「………でっか」「ふふ、そうでしょ。……気に入ってくれた?」

と、初めて少し私の反応をうかがうような言い方をした。


「気に入ったっていうか、まあすごいんですけど、その………」

放棄したと言っても困惑は捨てられるものではなく、やはり再び言葉選びに苦労し始める、のだが。

「………なんなんですか、これ?」

挙げ句の果てに固めた文章は、とても簡単なものになってしまった。

ふっ、と彼から零れた笑い声は聞かなかったことにする。


「……これはね、君の……お祖父じいさんから頼まれた事なんだ」


え、と自らの耳を疑う。けれど、数秒前の発言を幾ら思い返しても聞こえていたのは同じ言葉だ。

「お祖父ちゃん……?……どうして」

「………星、一緒に見たかったんだって?」

微笑みの奥の寂しげな眼が、望遠鏡に向けられた。


「…………!」

「約束、守れなかったから。代わりに、僕が一緒に見てやって欲しいって」

「………ぁあ」


数日前に、私が望まない形の非現実的な知らせの電話を受けて以来、初めて目の縁が濡れたのが判った。

掠れた声が漏れる。_______ほんの、少しだけだけれど。


「……こんな事言うのも少し苦しいけどさ。今日、お葬式だったんでしょ」

「………そう、です。………一度も、泣けなかったけど」

殆ど同じように可愛がってもらっていた筈の弟とは対照的で、幾ら心の中で悲しい、哀しい、寂しいと思っていても、どうしても実感が湧かなくて____湧かせる事が出来なくて、感情なみだの一粒も零れることは無かった。



「うん、知ってる。……見てたからね」

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