第5話惑星連合独立宇宙軍5

「ここまで馬鹿だと何を言えばいいんだろうな…グロッソと言ったか?苦労しているな?」




「申し訳ございません…」




「だが…上官である人間がきっちりと指導するべきではないのか?指導不足だと思うのだが?」




「仰るとおりです…」




このままでは自分はどうなるのであろうか…妻と地球に旅行に行けるのだろうか…そんな不安ばかりがグロッソを襲う。




「あれー?隊長俺なんかまずりました?」




この期に及んでこいつは…何故こいつは軍人に…そうか人手不足か…




「貴様のしでかしたことがグロッソの責任になるんだぞ?」




「え?何か悪いことしました?」




もう駄目だ…俺の人生が終わった…




その時別の女性が声をかけてきた。




「レイチェル隊長?さきほどから通信で呼んでいるのですが…通信機が故障致しましたか?」




「あぁ…いやすまん…聞こえていなかったようだ…で、どうした?」




「はい!大隊長が到着しましたのでご報告をしていたのですが…応答がなかったので…」




「なっ…隊長が到着しているのか!?どちらに降りられた!?」




「ちょっ…落ち着いてください!」




レイチェル殿上官がこちらに降りたのか…




まだ挽回ができるかもしれない…とグロッソは考えた。




「名前レイチェルさんっていうんですね!さすが隊長クラスになると素敵な名前だなぁ」




そんな望みも打ち砕いてしまう一言




お前はもう黙っててくれ!




「レイチェル?どうした?」




遠くから男の声が聞こえた。




その声の方向を見ると…




美女ばかりの団体に囲まれた男の姿があった。




「た、隊長…!」




「いや、見かけないから珍しいなと思ったんだけど俺の変わりに仕事しててくれだんだよな?いつもありがとな」




「いや…えーーっと…そのですね…」




「隊長違いますよ?レイチェルは他の男と逢い引きしていたようですよ?」




「あ、逢い引きなどしておらん!」




「ではそちらの方々は?」




「こちらの人はだな…」




レイチェル殿には悪いがここは自己紹介をしてさっさと事態を終息してしまおう。




「先程は助けていただきありがとうございます!私は第16艦隊87偵察部隊長のグロッソであります!」




先程より大きな声で自己紹介をしたグロッソ。


この空気を変えなければならないと彼なりの対策だった。




「あぁ…間に合ってよかったですよ。たまたま近くで演習してて援軍要請を受けたので、本当に間に合ってよかったです」




あぁ…物腰柔らかい大隊長で良かった…




助かったかもしれない…グロッソの苦悩が救われたはずだった。




「隊長聞いてください!この男が私を誘ってくるんですよ!?」




「そうなん?」




「えぇ!私は断りを入れてですね…」




「だったらさっさとその場を離れりゃいいのに何でいつまでもそこにいるんだよ?」




「久々に隊長と戦場をランデブー出来たので気持ちが高揚していたからです!」




「いや、ランデブーしたのお前だけじゃないからな…」




「っていうかぁー、隊長が到着したのにぃー、来ないってぇー、ありえなくない?」




「ぐっ…それはだな…!」




「だから、他の男と逢い引きをしていたからではないんですか?私としてはレイチェルさんの祝福を隊長と一緒にお祝いしてあげなくては、と思うのですけど」




「きさまぁ…!」




「はぁ…多分逢い引きはないと思う…けど隊長のお迎えに来なかったのも事実…レイチェル…マイナス100点…」




「何のマイナスだ!」




これは…この和気あいあいとした雰囲気ならいけるんじゃないか…?




グロッソは畳み掛けた。




「この度は助けていただきましたのに我が部隊の部下がレイチェル殿に失礼を働きました!部下の不始末は上官である私の責任になります!処罰があればお受けさせていただきたく思う所存であります!」




見事に腰を90度曲げ深々と謝る。




「あー…なるほどね…んー…まぁ今回は不問としましょうかね。せっかく助かった命ですから」




この方は神なのか?




これだけこちらは失礼を働いたのに許してくれると…やはり最後には誠実な心が大切なんだ…




しかし彼の思いはこの一言で崩れてしまった。




「うはっ!美人ばっか!すげぇ!俺もこの部隊に入れてほしいっす!」




終わった…




「へぇ…勇気あんじゃん?この部隊に入りたいってよ?」




「命知らずはまだまだいたのですね…」




「隊長以外の男が入隊したいって言って何人潰れたっけ?」




「確か…1000人は確実に越えていたと思いますけど…そこから先は数えていませんね」




「命知らず…」




「まぁいいんじゃない?久々に活きが良さそうだよ?」




「えー?あたしはぁータイプじゃないかなぁー」




なんだこの反応は…?




「あれれ?意外と皆さん受け入れてくれる感じっすかね?」




この空気で何故思う?




「ははっ!おもしれぇな!よーし!あたしが相手してやっかな!」




ナリアス死ぬんじゃないか?




「はいはい。全員そこまでな。各機の整備補充には時間が掛かるってことでしばらく休暇にするよ」




「よろしいのですか?」




「まぁ久々に奴らと交戦したからね。思いっきり機体も動かした訳だし、しっかりと整備しないとね。ってことで司令からも許可貰ってるから安心して休息していいよ」




「ならば!隊長私と食事にでも!」




「いやいや、隊長はあたしと食事するんだよ!」




「えー?隊長はぁーあたしのぉー買い物にぃー付き合うわけだしぃー」




「何を仰っているのでしょうか?隊長に必要なのは休息ですよ?私と心を落ち着けるためにプールに」




「違う…隊長は…私と部屋でゴロゴロする…」




なんだこの光景は?




この部隊はこの大隊長のハーレム部隊なのか?




ほぼ全員が大隊長と過ごすことを提案しているぞ…




だがこれでいい…!




これでナリアスも諦めがつくだろう!




ナリアスの方を見ると彼は下をうつ向いてプルプルと震えていた。




さすがにこの状況じゃぁ…と彼を哀れんだ。




しかしグロッソの予想は大きく外れていた。




「…けんな…」




「んっ?」




「ふっざけんなよ!てめぇら!俺を無視すんじゃねぇよ!」




グロッソの予想を斜め上に行く暴言であった。




「ばっ!おまっ!ナリアス!!上官に対してなんてことを!!」




「こんな俺と年が代わり無さそうな奴が大隊長だ?てめぇら俺の事舐めてんだろ!?こんな冴えなさそうな奴とイチャイチャしやがってよ!!俺の方がかっこいいだろ!?どうせ大隊長っても腕もそんなにないんじゃねぇのか!?後ろで射撃してた奴の一人じゃねぇのか!?あんぐらい俺にも出来んぞ!?」




ナリアス…お前…終わった…な…




そして後半はほとんどヒガミじゃないか…




もう言い訳できない…できるはずがない…




「ねぇ…この人…私の事…馬鹿にした?後ろからの射撃って…私の部隊の事だよね…?」




「多分な…仲間が馬鹿にされんのはムカつくが隊長を馬鹿にしたのは一番許せねぇな……おい!お前…死んだぞ?」




「この人はぁー隊長をぉー馬鹿にしたんだねぇーはぁ……てめぇ…死なすぞ?」




ヤバい!!ヤバいヤバい!!




殺気がヤバい!!!




11個も殺気が感じるよ!!




この期に及んで何か目覚めちゃったかな!?




このままではナリアスが!いや自業自得なんだが…助けないと死んでしまう!!




しかし助けは意外な所から上がった。




「ぁー、皆落ち着けっての。俺が馬鹿にされんのはいいから…いや、良くないけど皆が怒ってくれただけで十分だって。でもな、俺の部隊の仲間を馬鹿にしたのは良くないな…そこは謝ってもらおうか」




あー大人やぁ…この人大人やぁ…




「は?何で俺が?謝るだ?お前らが俺を無視して話進めんのが悪いんだろうが!!」




ナリアス止めてくれ…!お前のライフは既にマイナスで何回も死んでるんだぞ!




「あー…それはねぇ…とはいえ、さすがにこれ以上はまずいなぁ…最後のチャンスだ。ナリアス君。今謝れば不問とする」




「お断りだ!ふざけんな!上官だが知らねぇが俺をなめやがって!!」




「そうかそうか…そうきちゃうか…よし!じゃあ演習しようか1対1での演習をしよう!そこで俺に勝てば今回の件は不問で負けたら…そうだなぁ…彼女に謝るのと…後の判断は艦長に任せようか。って訳でグロッソさん!艦長に演習許可よろしくね」




「私が…ですか?」




「えー!ずるい!隊長と演習なら私がしたい!!」




「隊長…普段私たちと…演習…しないくせに…」




「いやいや、演習だけど指導でもあるからね?というか俺との演習は嫌ってほどやってるでしょ?」




「あーぁ…また隊長が一人潰してしまうのですね…」




「まぁいいんじゃねぇの?自業自得だろ?」




なんだこれ…何故こうなった…?




「いいぜ…やってやんよ!一つ追加してもらう!てめぇが負けたら隊長の座を俺に寄越せ!」




「うん。いいよ」




「その態度…どこまでも…舐めやがって…!!後悔すんなよ!!」




「はいはーい!じゃぁグロッソさん…許可を取りましょうか」




「は、はい…」




ちなみにナリアスの同僚は鉄騎士団の別の女性と仲良くなっていた。

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