第6話惑星連合独立宇宙軍6

「演習…ですか?しかし一体なぜ…」




「ええ…それはですね…」




「活きのいい隊員がいましたのでちょっと指導をね」




「はぁ…?こちらは構いませんが…」




「艦長ありがとう!んじゃ演習用の機体を借りるね」




「はぁ…」




艦長は終始疑問だらけの顔をしていたがモニターを切った。




「よし!それじゃぁ早速やろうか!」




「本当によろしいのですか?あんな口を叩きましたがナリアスはまだ若いのでこれからグングンと伸びていき隊長クラスとは言いませんが良い兵士になると思うのですが…」




「じゃぁ尚更演習しないとね。けどねぇ…さすがにあの口調は駄目だよ。上官でも庇いきれないよ。だから…ね?」




グロッソには判らなかった。




何故こんなことをするのだろうか。




一体何の意味があるのだろうか。




上野御徒町立場である鉄騎士団の対が一言言えばナリアスは終わるのではないだろうか?




何故わざわざ演習を…




演習用の機体を確認しにやってきた。




「へぇ…演習用なのに結構新しいね」




「まぁ…比較的新しく出来た艦隊ですので…」




「そっか…俺の時はロートル過ぎて演習中に爆発するんじゃないかってぐらいやばい機体だったよ」




「はぁ…それで大隊長殿は…この演習を何故…?」




「そうだねぇ…俺なりの教育指導かな…」




「教育指導?」




「見てれば判るよ」




演習で教育指導…?




いや、それはもちろんあるんだがそれと今回の件は別なのでは…?




「さてと…準備はいいかい?」




「あぁ…」




「どうしたー?元気ないぞー?」




「うるせぇ…黙ってろ…」




「嫌われたみたいだね…まぁいいか。カウントよろしくね」




「では、カウントします。5…4…3…」




カウントが2となる前にナリアスの機体から攻撃を仕掛けてきた。




不意討ちによる攻撃ではあったが大隊長は軽々と回避して見せた。




「んーいいねぇ…実践の心構えは出来てるかな?」




ナリアスの機体は棒立ちのまま大隊長の機体に狙いを定めペイント弾を打ち続けるが一向に当たらない。




「くそっ!くそっ!くそっ!何で当たらないんだよ!!」




「撃ち方は…駄目だな…基本ができてないのか、怒りで忘れているのか…」




いくら弾を撃ち続けても当たる気配が一切見られない。




ナリアスは焦りと苛立ちを隠せずにいた。




「くそっ!これ銃身が曲がってんだろ!真っ直ぐ弾が飛ばねぇぞ!!」




ちなみにコックピット内の会話は全て鉄騎士団及び87偵察部隊の二人にも聞こえ見えている状況だ。




「んー…勢いだけだな…」




「まったくだな…あれでよく隊長とやり合う気になったな…」




「射撃センス…ゼロ…」




「たいちょぉーちょーカッコイイー♪」




「冷静になれないのに隊長に挑むなんて…信じられませんね…」




「んー…あの方は駄目ですね…真っ先にやられてしまいますね」




それぞれの隊長が口々にナリアスへの非難と自分達の隊長への賛辞だった。




「くそっ!おい!みてんだろうが!あの機体スピードがおかしいぞ!!」




「銃の次は機体か…ますます呆れるな…」




「はぁー…あたしぃ…飽きてきたしぃー…」




「宿に行って…寝てれば…?隊長に…伝えとくよ…?最後まで見てなかったって…」




「ちょっ!?冗談だってばぁー♪最後までみてくしぃー♪」




開始からずっと撃ち続けたいた銃はついに弾が尽きた。




「ちぃっ!弾切れとか使えねぇな!」




そう悪態をつきながらブレードを抜刀し構える。




「おっ?接近戦もやるかぁ…根性はあるみたいだね」




「うるせぇ!その減らず口ごとぶったぎってやるよ!!」




機体を加速させ勢いそのままに切りつける!




があえなく回避されてしまう。




「うんうん。勢いは良し。けど…エイリアンが相手じゃないんだからもう少し考えないと…」




ナリアスの機体はひたすらブレードを振り回すが子供のチャンバラかのように、ただひたすら振り回すだけだった。




「太刀筋も何もあったもんじゃありませんね…」




「アイツは訓練受けてんのか?素人と何も変わらねぇぞ?」




「動かせるだけマシって事で…壁にはなるんじゃない?」




鉄騎士団の面々は興味がなさそうだ。




「がぁぁぁあああ!なんで…なんでだよ!なんで当たらねぇんだよ!」




「太刀筋が素直すぎる。大降り過ぎる。この二つだけで予測は可能だよ?だからこんな風に…ね!」




ナリアスの攻撃をブレードでいなし武器を巻き上げ手ぶら状態にさせた。




「さて…続いては回避能力だね。しっかりと逃げてくれよ?」




「ぅ…ううぅぅ…ああああああ!!!」




機体を反転させブースターを全快にし必死に距離を取ろうとするナリアス。




だが、大隊長はそれを許さない。




「さて、まずは射撃だけど撃つ瞬間に手に力が入りすぎて若干ぶれてるんだよ。もちろん機体である程度は修正してくれるけど…君の場合は修正してもダメなぐらいブレブレなんだよね。だから止まりながらいくら撃っても当たらないんだよ。後はね…これスナイパーライフルじゃないからね。止まって撃つにしても距離を積めないと…ね!」




そう言いながら逃げ惑うナリアスの機体に次々とペイント弾が当たった行く。




ちなみにペイント弾が当たると本当に被弾したかのように機体の性能が落ちていく仕様となっている。




「な…なんで…なんで俺には当たるんだよぉ…」




「一直線に逃げすぎだよ…予測射撃を使うまでもなく当てやすいよ…じゃぁ次は追いかけながら撃つからね」




「いやだ…いやだぁぁぁぁあ!」




「お!少しは学習したかな?そうそう!やってランダムに動かないと当てられちゃうからね」




ナリアスの機体はジグザグに動いたり急に旋回したりととにかく当たらないように必死に動いていた。




しかし…無情にもペイント弾は機体に次々とヒットし、最終的には全ての機能が停止するまで追い詰められた。




「うーん…射撃は以上かな少しは判ったかな?」




「…はぃ…」




「よし!いい返事だ!次は接近戦といこうか!オペレーター聞こえてる?彼の機体性能を戻してくれ」




「畏まりました。ナリアス演習機の性能を戻します」




「ちょ…ちょっと…もう…無理です…」




「何が無理なのかな?性能は戻したよ?」




「いえ…あの…ですから…」




射撃の時点でナリアスの心は既に折れていた。




「ですから?言ったよね?これは演習だって。じゃあ接近戦やるからね?ちゃんと避けてくれよ?」




「ひっ…!!??」




その後は言うまでもなくナリアスはボコボコにされた。




大人が子供と遊ぶかのように…




「うーし…演習終了!ほら戻るよ」




「はぃ…」




グロッソはこの演習では一方的にナリアスがヤられると予測していた。




結果はその通りなのだが…なぜナリアスがあそこまで憔悴しきっているのか…それだけが判らない。




二人が戻って来ると大隊長は騎士団の皆に歓迎されながら戻ってきた。




一方のナリアスは隊長が一人迎えに来てくれた。




「ナリアス!大丈夫か!?」




「ぁ…隊長…あの…すいませんでした…迷惑をかけてしまって…」




何故…何故こんなに憔悴しきっているんだ?




「グロッソ殿。貴方もあの訓練を受ければ判る…射撃訓練は基本的に回避していれば問題はない。しかし隊長はこちらがどんな動きをしようとも必ず後ろをついてくる。そして必ずと言っていいほど命中をさせてくる。どういうことか判るか?自分の機体はどんどん性能が落ちていき…どんどんと追い詰められていく…訓練だから死にはしないが…あの恐怖といったら…最後には機体が動かない…真っ暗な状態になるんだぞ?動かない、通信ができない、周りの状況も確認ができないのに機体だけが揺れる…あの感覚が…」




グロッソは想像してみた。




確かにその状況は怖い…かもしれない…




「さてと…君はまだ若いんだから…これからも頑張っていこう」




「はぃ…あの…数々の失礼な発言…すいませんでした…」




「うん。素直に謝れるのはいいことだね。それだけ素直ならもっと上に上がってこれるよ!」




にこりと満足気に笑う大隊長。




「あのセリフ言われた奴ってどうなったっけ?」




「再起不能…大体は除隊だな。残ってても後方支援や雑務に転換しているな…嘆かわしい…せっかく隊長に目をかけていただいたというのに!」




「大体…皆…謝る…で、終わる…」




「這い上がって来た人は一人もおりませんねぇ」




「なんだっけぇ?ここから上に上がってくるならぁー騎士団にぃー編入させるだっけぇ?」




「一人もいねぇけどな…」




大隊長は常にこのハーレムな部隊に男を入れようと画策していた。




さきほどの演習は少しお灸を据えた訓練なので論外とされる。




常に新しい男隊員を確保して大事に育て上げようとすると決まって言われる。




「すいません…もっと鍛えてから出直してきます…」




これは大隊長が悪いのではない。




他の隊長がこの騎士団に入れさせまいとしごきにしごいての結果だった。




自分以外のライバルが10人もいてそこに別の男が来るなどとは考えたくもなかった。




せめて入るのであればそれ相応の腕にしなければならない。




その結果、地獄のという名の訓練に新人男隊員は三日と持たず離脱していく。




普通の軍であれば任命された部隊を簡単に除隊されることは許されない。




最初は除隊されることはなかった。




しかし送り込んだ隊員が次々と涙を流しながら"あの部隊では無理なんです!!壊されます!"と訴えてくるので特例として即時除隊が許されている。




こうして彼女達、11人の隊長の結束により鉄騎士団は男の隊員が補充されることは無かった。




ちなみに隊長に潰された1000人以上の男達は必要以上に絡んできて、大隊長に演習という地獄に案内された人達である。




そして今ここに新たに大隊長に潰された男が誕生したのであった。




「グロッソさん。という訳で彼の今後をよろしくね。もし鍛え上げられたら俺に連絡してよ」




「は、はい!了解致しました!」




大隊長は再びにこりと笑った。




「お腹空いたし…皆でご飯でもいこうか?」




「まってましたぁー♪」




「ぁ、その前に報告しないとか…」




「隊長!心配せずとも既に終わらせております!」




「さっすが!頼りになるね」




「隊長。この艦のおいしいとされる店の場所はチェックしてありますのでお好きな物を仰ってください」




「私…肉がいい…」




「見た目と違って食べ物に可愛いげがありませんのね…」




グロッソの前から鉄騎士団が去っていった。




グロッソの今後の人生の中でこれ以上の出来事は起こらなかった。




その頃同僚の男は鉄騎士団の隊員と仲良くご飯を食べていた所を奥さんに目撃され土下座していた。

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