第4話惑星連合独立宇宙軍4
「聞こえるか?こちら鉄騎士団第二小隊隊長レーチェルだ」
「はっ!こちら第16艦隊87偵察部隊グロッソです」
「貴殿らの船で補給を受けたい。案内してもらえるか?既に館長には報告済みだ」
「了解しました!」
「頼むぞ」
モニターが消えると同時に部下から不謹慎な声があがった。
「隊長!あの部隊のやつら、うちらの船に来るんすね!顔が拝めるぜ!」
「言葉には気を付けろ…俺達じゃ相手にされないぞ」
「いやいや見るだけっすから!でも可愛かったらもしかしたらが…」
「これだから独身は…んなもんあるわけねぇだろ…問題起こすとうちの隊長がヤバくなんだから辞めとけよ」
「ちょっとくらい夢見たっていいだろ?こちとら独身なんだからよ」
「はぁ…たいちょー?」
「判った…どのみち援軍のお礼を言わなければならないからな…絶対に失礼のないように頼むぞ」
「さっすが隊長!第16艦隊87偵察部隊、ナリアス帰投致します!」
「はぁ…」
グロッソは更に深いため息をついた。
宇宙連合第16艦隊の船が見えた。
ようやく家に帰って来たと安堵した。
自分達のドッグとは反対側に次々と鉄騎士団の機体が着陸をしている。
「たいちょー!はやく!」
アイツは子供か…本当に問題を起こしてほしくないと心から思う。
「87偵察部隊、グロッソ!只今帰還致しました!」
「ご苦労。報告をこちらまで伝えてくれるか?」
「はっ!その前に鉄騎士団の方々にご挨拶をしてもよろしいでしょうか?あの方々がいなければ我々は助かりませんでしたのでお礼を…」
「失礼のないようにな…あの部隊は敵に回すと…色々とマズイからな
「はっ!では後程お伺い致します!」
「たいちょー!早く行きましょうって!」
「お前は…お礼をしたらすぐに艦長室に向かうからな」
「判ってますって!」
「はぁ…隊長…いざというときは俺も止めますので…」
「頼むぞ…」
反対側にやってきた87偵察部隊は驚いた。
普段は半分も埋まらないドッグがこれでもかというぐらいパンパンに埋まっている。
普段は片手間に作業をしている整備士達も今ばかりは忙しそうに動き回っている。
グロッソは奇妙な事に気づいた。
鉄騎士団は間違いなくこのドッグに降りたはずだ。
なのに見えるのは女ばかりであった。
「おいおい…冗談だろ…」
「うひょー美女ばっか!」
「女だけの部隊なのか…?」
それぞれバラバラな感想だった。
まずは話を聞かなければと思いグロッソは近くにいた女性に声をかけた。
「あー、すまない。こちらに鉄騎士団の隊長はいらっしゃるか?」
「はい?隊長ならまだ戻ってきていませんが…」
「そうですか…我々は先程の先頭で応援要請を出した偵察部隊で是非お礼をと思いましたので」
「そうでしたか!隊長は私たちの後ろをつとめてくださったので間もなくこちらに到着すると思われます」
「判りました。では来るまでこちらでお待ちさせていただいてよろしいでしょうか?」
「えぇ。問題ないと思います」
ふぅ…今日はため息が良く出る日だな…そんな事を考えた矢先だった…やはりコイツが問題を起こした。
「ねぇねぇ!君可愛いね!君も鉄騎士団なの!?よかったらこの後に俺とお茶でもどう?この船に旨い酒を出す店があるだよ!どうかな?」
「えぇっと…お誘いは嬉しいのですが、機体の整備もありますので…」
「えーちょっとぐらい駄目かな?整備は整備士に任せればいいっしょ?こんだけ機体があれば時間も余るだろうし…ね!」
「いえ、その…隊長から自分の機体は自分で面倒を見ろって言われてるので…」
「えー?それじゃあ整備士の仕事じゃん?君はパイロットなんでしょ?」
「えぇまぁ…」
「だったらさ…ね!ね!」
「あのですね…」
「ちょっとだけだからさぁー」
こいつは…言ったそばから問題を起こしやがった…
「おい!いいかげんに…」
「そこ!何をしている!!」
遠くから怒鳴り声が響き渡った。
その声の主はこちらへと向かってくる。
「隊長!?申し訳ございません!」
「どうした?なにがあった?」
この女性が隊長?
はっきり言えばかなりの美人だ。
連合ミスコンに出れば間違いなく優勝だ。
顔は可愛らしく、髪は腰までのストレート
パイロットスーツを着ているためか凹凸がはっきりと判る体つき。
まさしく美女という言葉が相応しい女性だ。
「申し訳ありません!部下がそちらの隊員に失礼な事を致しまして…」
「そうなのか?」
「はい…お茶に行こうと誘われたのですが整備があると断っていたのですが…」
「そちらの隊員の方の言うとおりです。申し訳ありません!」
「ふむ…ならば仕方ないとしよう…君は整備に戻るんだ」
「はいっ!失礼致します」
グロッソは安堵した。
何とかこの場は収まったという安堵だ。
「失礼しました。我々は87偵察部隊でさきほど助けていただいた者です。一言お礼が言いたかっただけなのですが…申しわけありません」
「なるほど…しかし隊長はまだ戻られていないのでもう少し待っていただこうか」
「失礼ながら…貴女が隊長では?」
「私は第二小隊の隊長だ!私の上に大隊長がおられる!」
「そうでしたか!これは失礼を!」
「気にするな!よくあることだからな」
何とか普通の空気に持っていけはずだった。
しかし、この安堵も無情にも馬鹿な部下が壊してくれた。
「こんなに可愛いのに隊長なんすっか!?すっげぇ!」
「おまっ!」
「失礼しました!87偵察部隊、ナリアスです!」
「ふむ…」
「先程は助けていただきありがとうございます。お礼と言ってはなんですが…この船に良い飯を出す店がありまして、よろしければそちらまでエスコートさせていただければと思います」
グロッソは心からこいつをぶん殴りたい衝動にかられた。
あれだけくぎをさしたにもかかわらず…この馬鹿はやってくれたのだ。
「ほう…ナリアスとやら…それは私を誘っているのか?」
「勿論です!美しい隊長様に喜んでいただければと思いまして」
「そいつは光栄だな」
まさか!?成功したのか!?
「だが生憎と私は軟弱な男に興味がなくてな!悪いが他を当たってくれ」
「失礼ながら今は偵察部隊に籍を置いてますがいずれは隊長クラスになると思っていますので釣り合いは取れるかと…」
同僚の男はナリアスをただ呆然と見ることしか出来なかった。
どの口がそのセリフを言わせているのだろうか…こいつは天性の馬鹿なんだろえか…
「はぁ…話にならんな…隊長に礼を言うだけではなかったのか?」
「それは勿論ですがこれは個人的なお誘いでして…」
「貴様…少し甘やかしてみれば…よくもベラベラと軽口を叩けるな?お前は今誰に向かってそんな口を叩いているんだ?」
「はっ…?」
「聞こえなかったようだな…もう一度問うぞ?貴様は誰に向かって口を聞いているんだ?」
グロッソはこの言葉の意味を理解した。
単純に言えば怒らせてしまったのだ。
鉄騎士団というエリート集団は確実にこちらより階級が上だ。
上官に対して発していい言葉ではない。
だがナリアス本人は…
頭に?が浮かんでいるかのように何も判っていなかった。
「えっと…ぁ!こいつは失礼しました。お名前を最初にお伺いするべきでしたね。よろしければ美しいレディーのお名前をお聞かせ願えますか?」
もう取り返しがつかないとグロッソは天を扇いだ。
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