九州征伐
九州統一を目指す
対抗できない大友側は豊臣秀吉の傘下に入ることで救援依頼をしてきた。
秀吉は承諾して先発部隊を作り上げて派遣するが、九州最強の武を誇る島津軍に大敗を喫してしまった。
1587年。
今度は秀吉が自ら赴くことを決意し九州征伐を掲げる。20万人という巨大戦力で島津軍制圧を目指した。
「今回も石田三成殿に手配してもらうのがいいのではないか」
20万の軍勢をどうやってそろえればいいか会議が開かれている中、福島正則から推挙の声があがった。
こんな兵数を扱えるわけがない。
ただ20万人がぞろぞろ行けばいいというものではないのだ。
武器や食料や医療品の準備。様々な方面からの行軍計画。船や馬の手配。それを切らさないための補給。
前代未聞の巨大戦力を支え続けることなど現実的ではなかった。
福島正則の推挙は、それを踏まえた上でのものである。できないことを押しつけて失敗させようという腹である。
「三成。お主に頼んで大丈夫か?」
秀吉は名前が挙がった石田三成に問うた。
これを断れば評価が下がる。断れずに受けたところで失敗が待っているだろう。
どちらに転んでも三成は恥をかくことになる。
一体どんな言い訳をするであろうか。奴の慌てぶりが見物だと福島正則はほくそ笑んだ。
隣にいる加藤清正も笑いを押し殺すようにして彼の返事を待っている。考えていることは同じだ。
三成は秀吉の前に歩み寄ると、丁寧に座り、頭を下げながらはっきりと答えた。
「お任せ下さい」
一同から驚きの声が上がった。
頼んだ秀吉でさえ即断されて一瞬、間が開く。
「そ、そうか。さすが三成だ。ではこれより20万の軍で島津軍を殲滅しようぞ」
秀吉の鼓舞に列席している武将達が勝利の雄叫びをあげた。
目論見通りに行かなかった福島正則は一呼吸遅れて、慌てて奮起の声を出した。
諸将が去っていく中、大谷吉継が石田三成の元に歩み寄った。
「大丈夫なのか? 例え勝利であっても、その中で少しでも失敗があれば全部三成殿のせいにされてしまうぞ」
長年一緒に過ごしてきた友が気遣ってくれた。
「秀吉様が求めているのは安心だ。計画が無謀な場合は進言することも必要だが、成功する確率が低いからと不安を口にしてもどうしようもない。だったら安心してもらうことが大切ではないだろうか。あとは全力でやるだけだ。自分の全てを総動員して」
失敗したときのためにと保険をかける行動はかっこ悪い。全部を成功させればいいのだ。
経験、知識、今まで助けてくれた者、これからお世話になる者、私に付いてきてくれる家臣、そして友。それらを使って。
その為に私は秀吉様から権力を与えられているのだから。
「だったらそうだな。今回は武力に優れた者がたくさんいることだから、私も三成殿の仕事を手伝うことにしよう。これだけの大仕事をするのだ。それくらいのお願いは秀吉様も聞いてくれるだろう」
正直不安はある。口には出さなくとも吉継は分かってくれた。
その不安を少しでも減らすために協力してくれる友達というものは本当にありがたいと三成は心の中で感謝した。
そして10万の部隊を二つに分けて九州征伐が行われた。
本州、四国、海からと島津を攻め続けた。
その間、三成は自分に与えられた仕事を完璧にこなしていった。
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