瑞国面(北欧)に堕ちたヤンデレに洗脳と射精管理を同時にされそうになる話

竜田川高架線

射精は私が管理する。私以外の女に欲情したらちんちん折る

 校舎の3階にある社会科準備室、その扉には100均で買ったプレートに「文学部」と書いたモノが吊るされている。

 今現在そこに集まっているのは、普段数人いるメンバーのうち、2人の男女。


「これは、スウェーデンの航空庁国立工場が開発したJ22で初飛行が1942年ね。でこっちは、同じくスウェーデンのサーブが開発したサーブ21で、初飛行は1943年」

 黒髪ポニーテールの少女、椿つばきはホワイトボードに数枚の写真を貼り付けて、なにやら解説を始めた。

「第二次大戦が始まって、他の国が売ってくれる良さげな戦闘機がなかったから、じゃけん自分で開発しましょーねーって言って作ったのが、FFVSのJ22とサーブ21」

 指し棒で、どこにでもありそうなレシプロ戦闘機の写真を指す。

「J22は、一見普通の戦闘機だけど、中身は鋼管骨組みで合板張り付けっていう、なかなか頭おかしい作りしてる。しかも貧弱エンジンのくせに時速570キロくらい叩き出すの」

 今度は、短い胴体の後ろにプロペラが付き、両主翼の中央から後ろにブームが伸びてる、見た目が既にやべえ方の写真を指した。

「サーブ21は一回見たらもう忘れらんない。見た目が既に頭おかしいし、後でエンジンがジェットに変えられてる。やっぱ頭おかしい」

 

 さて、そもそもここは文学部であってミリタリー研究部でも飛行機研究部でも無い。

 ミリオタ、特にスウェーデンをこじらせた椿という少女は、ことある毎に手近にいる人間を瑞国面(北欧)に叩き落とそうと必死になるのだ。

 

「椿ちゃん、わかったから座ったらどうですか」

 そして彼女の話をほとんど聴かず、椅子に座ってスマホでグラブってたボサっとした髪の少年、夕日ゆうひが呆れた様子で促す。

 そして、椿と呼ばれた黒髪ポニテ少女は無言でそのまま、彼の机を挟んで向かいの席に座った。

「ねえ、ここゲーム部じゃなくて文学部だよね」

「そっすよー。航空研でもないけど」

「でも今はグラブってる」

 真顔の抗議。

「ニーアちゃんをお迎えするためであって、これはゲームではない。救出作戦ですよ」

「スマホ折ってもいい?」

「他の端末でも出来るし、パソコンでもできるんで」

 夕日は、目線を画面に落としながら、適当にあしらって応えた。

 彼がバトル画面でキャラクターのスキルを選択している最中、突如、スマホが取り上げられた。

「なっ!」

「ゲーム禁止っ。二次元の女より、私の相手をするべき」

 椿は机の上で四つん這いになり、そして迫っていた。

「顔近いです。あとスマホ返してください」

「だめ」

 即拒否し、スマホを強奪したまま後退。自席に戻る。

 彼女はそのまま、そのスマホをいじりだした。

「椿ちゃん、勝手にいじるのやめてもらっていいですかね」

「ユウが他の女と連絡とってないか確認してるの。あと、エロサイト見てないか」

 ユウとは、困り顔でスマホをどう取り返そうか悩んでいる、ボサボサ頭の少年のことである。夕日ゆうひなので、このあだ名がついた。

「悲しいことに連絡するような女子の知り合いはいないし。エロサイトも、見てたとしても履歴くらい消してますよ。そもそも俺のプライベートに干渉されるのは困ります」

「ユウの射精は私が管理する。私以外の女に欲情したらちんちん折る」

「怖っ」

 淡々とスマホ内を探索し、一通り終えて問題なしと判断すると、一応は夕日に返却した。

「二次元もだめだから」

 最後に念を押して。


 ついでに、椿は椅子を夕日の隣において、そこに座る。

 そして寄りかかり、肩に頭を乗せた。

「ユウは、私だけ見てればいいの」

 言いながら、椿の視線は夕日の眼を貫く。

 黒く虚ろで、只ひたすらの感情がそこに集中する。

 私を見ろ。私のものになれ。お前の全ては私のものだ。

 狂気的な独占欲が次元を歪ませる程に放たれる。

 だが、夕日本人は

「はいはい、ちょっと今忙しいんで」

 と、無視よりも酷い言葉を放って、またスマホをいじり始めた。

 

「ねえ……」

 椿の右手が、彼の顔を捉える。

 人差し指は瞼へ、親指は唇へ。

「ダメ。そういうの」

 画面に向いた注意を、とにかく自分に向けようと躍起になる。

「……」

 顔を覗き込み、今一度正面から目を捉える。

 どうやったらこちらを見るのだろう。何をどうすれば。

 いっそのこと、手足を切り落としてしまおうか。そして首を固定する。そうすれば否が応でも、こちらを見る。

 そうだ、元々はその予定だったんだ。

 動けなくして、自分が居ないと生きられない体にして、自分しか見れなくして、そして自分は彼に最上の愛を注ぐ。

 それが願望。

 嗚呼、でも勿体無い。

 手足を切り落としてしまったら、彼から自分に触れてくれることが無くなる。

 自分が求めるように、いや、それ以上に彼から求められたい。

 体を、存在を。

「私を見て? ねえ?」

 制服越しに触れ合う体からは、上手く体温は伝わってこない。 

 だが、接近した顔、その鼻からは呼吸を感じる。

「ねえ……このまま気持ちよくしてあげよっか……? そしたら、ゆうもわたしのことすきになる……?」

 声音は懇願にも近い。

 だが夕日は動じない。椿の言動は一切意に介さない。

 そして、まるで感情が無いような真顔のままでいる。

「椿ちゃん、時間切れです」

 そして独り盛り上がる少女に対し、淡々と少年は告げた。


 その瞬間に、部屋の扉がガラガラと開けられ、そして一人の人間が入ってくる。

「うぃーす」

 と、気だるげな声が、同時に聞こえる。

 ポニテ少女椿の体中から、冷や汗が噴き出す。

 カタカタとからくり人形の如く首を回し、扉の方向を見て、その事実を確認した。

「わわわ忘れ物〜」

 そう歌う人物こそは、部長だった。


「あ、すまん……。ごゆっくり」

 そして部長はそっと戸を閉める。なにも見なかった事にして。

「待って! 待ってください部長! これにはワケが!」

 椿は必死に呼び止めようとするも、その声は届かない。

 どうにか弁解し誤魔化そうと、部長を追いかけるために、部室を飛び出した。

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瑞国面(北欧)に堕ちたヤンデレに洗脳と射精管理を同時にされそうになる話 竜田川高架線 @koukasen

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