四杯目 モスコミュール
モスコミュールには思い出がある。
あぁ、わて、酒弱いんや。そんな感じの思い出である。
あれはいつだったか成人して間もない頃だったか。
保育科を卒業して保育士になっていないのはその会の中で私だけだった。
友人と共に受験したのに、一番入学を望んでいた友人が落ちるという予測不可能な事態を乗り越え、子供が苦手な私が保育実習で「不可」の烙印を押され死に体ながらも卒業し、国家資格なのに当時激安薄給料で長時間拘束他人の子供の命を預かるという最大の教育福祉的行動をとれないが故に遂行できなかった保育士という任務に私以外の三人娘が責務を果たしているという飲み会だった。
__すいません他人に影響された文章を書いてみました。ワタシ冒険したかったんです。大変、大概、申し訳ありませんでした。
で、そんでもってその飲み会で一杯目に頼んだのがモスコミュールだった。
甘いカクテルに飲み慣れてきていた
そう、モスコミュールって甘過ぎもせず、ジンジャーエールの飲みやすさがウォッカベースということを忘れさせる、恐ろしい飲み物だということを、若かりし頃の無職の私は分からなかったわけで・・・・。
Wikipedia参照すると、”モスコミュールとは「モスクワのラバ」という意味があり、「ラバに蹴飛ばされたように」効いてくる、強いウォッカベースのカクテルであることを表す”
なんと。味と名前に似合わず酷い。なんだおい、ロシアの酒か!今調べて
__おっとまて
1940年代初頭、ハリウッドのジャック・モーガンというバーテンダーがイギリスのリキュールである「ピムス NO.1」を使ったカクテルのために大量に仕入れたジンジャービア(en)の在庫を処分するために考案したとされている説と、1946年にスミノフブランドのウォッカの販売促進のため、スミノフを使った手軽に作れるカクテルを製造元のヒューブライン社が紹介したため広がったという説、あるいはジャック・モーガンとヒューブライン社が組んで広めた、とされる説が有名。
__以下Wikipedia参照コピペ
なんだよ紛らわしい。スミノフか。
そんな純粋無垢な私は調子に乗って二杯目も間髪入れずにモスコミュールを頼んだ。
ソイツはいきなり来た。そう、小生はモスクワのラバに蹴られ始めたのだ。あの、忌まわしいロシアのロバに。今まで友人らと談笑していたワシは急激な体調の変化を感じ始めた。火照ったあたまの血の気が引き、ぐわんぐわん回り、胃のあたりをラバに殴られたように強い●●気が襲ってくる。
~~~~食事している方・
顔面蒼白になり、唸りだす拙者に、皆の者がどよめく。保育士三人衆参れ。
痺れ始めた指先に、おいどんは、すでにもうここから一歩も動けないことを悟った。
「すいませーん!店員さん!袋ってもらえます?」
親友の真希が電光石火でビニール袋イン紙袋をもらってきた。素晴らしい。褒めて遣わす。
亜美がすかさず私の後ろに回り込み、背中をさする。
真希の持っている袋の中に、私はためらわずに三発ほど発射した。
私が発射している間、保育士たちは今ここで何事も起きていないかのように勤め先の保育園の出来事をまだ愚痴っている。スゴイ。汚物の手練れだ君たちは。
時々、よしよしとでも言うように彼女らは会話の口を一切止めることなく背中撫でてくれる。
吐き倒して涙目の私にあらかじめ用意しておいたお
「店員さーん!これ、捨ててもらえます?」
真希はゲロの入った袋を渡すと、自分のハイボールを注文した。
死んだ大型犬のようにその場でうずくまる私を尻目に三人はまだ勤め先の保育園の話をしているようだ。グロッキーな私の耳にかすかに副園長への不平不満の文句が聞こえる。
たった二杯のモスコミュールでそんな失態を犯したのだ。のちにそいつがウォッカベースという事を知る。この話はダイキリに続く。
__今回冒険してみました。一応ホントの話。
終。
お酒の弱い私が酒を嗜むおはなし 松生 小春 @STO11OK
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。お酒の弱い私が酒を嗜むおはなしの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
食った食った、ラーメン喰った/松生 小春
★19 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
みんなの知ってる文豪!?/松生 小春
★26 エッセイ・ノンフィクション 完結済 23話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます