その4 戦闘準備

 翌日、再び真理から電話があった。


(貴方の事だから、どうせ何を言っても止めないだろうから、大サービスでいい情報を一つだけ教えてあげるわ) 


 やけに勿体ぶった前置きをして、彼女は話し始めた。


 南米の某国・・・・現在政権側と反政府ゲリラが血で血を洗う抗争を絶賛展開中・・・・そこの副大統領が、三日後に来日するという。


 当然、反政府側も黙ってはおかない。しかしながらまさか連中自らが第三国である日本に乗り込んできてテロをやらかす訳にもゆかない。


 そこで、彼らは『プロ』を雇った。


 つまりは『殺し屋』というわけだ。


 それが『ゴルゴ影山』という情報が、公安から流れてきたという。


 警察の内部事情を知ってる人間なら、公安と刑事は、どこの都道府県の警察でも上手くいっていないのは大体分かるだろう。


 しかし、そこは『切れ者マリー』のことだ。


 彼女なりの独自ルートでこの情報を仕入れた。

 

警察おまわりに借りを作るのはノらないな』


 俺も勿体つけて言うと、


『心配ご無用よ。「ある時払いの催促さいそくなし」ってことでどう?』

 

 女の言葉にたぶらかされる俺じゃないが、まあ、彼女はウソだけはつかない人間だからな。


 しかし、間違ってもらっちゃ困る。


 俺の仕事はテロを阻止することでもないし、ましてやスナイパーをことでもない。


 影山が何故彼女に金を送り続けているのか、その訳を突き止めること、それからできれば彼女に逢わせてやること、それだけだ。

 

 某国大統領が来日するのは三日後のことだ。



 某国大使館は南麻布一丁目の仙台坂近くにある、20階建ての高層ビルの最上階に居を構えている。


 そのビルより高過ぎも、低すぎもしない。ほぼ同じ高さのビルは10棟、しかも大使館では同日ビルを見渡せるホールで大使主催の歓迎パーティーが開催される。


 ホールは西側にだけ一面防弾ガラスで覆われている。


 片側は壁だ。


 狙うとすれば当然ここしかない。


 俺は10棟のビルを一つ一つ探った。


 そのうちの3棟は警備員が常駐している。


 3棟は大使館側に窓がない。


 3棟は警備員どころか、警察官が既に固めていた。


 となると残りは1棟・・・・・そこしかない。


 カンばかりに頼るのは邪道だ。


 自分でもそう思う。


 俺は賭け事は性に合わないが、賭けてみることにした。


 丁と出るか、それとも半か・・・・・


 いずれにせよ、自分で恥をかけばいいことだ。


 それが探偵の特権てやつさ。


 

 


 

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