夏思いが咲く

作者 湊波

25

10人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

広告代理店で働く隆二は、このところ仕事がうまくいっていない。
同期は考えたコピーを次々採用されるのに、隆二のは鳴かず飛ばず。
そんな隆二の頭の中でなにかが、茫洋とした線になった。
彼は無断で職場を抜け出し、高校野球を観戦しにいく。
そこで隆二が目にした『奇跡』とは――。

まぁ、わたしたちの人生、唯一の目標なんかがあるわけではありません。
目標があるという人もいるかもしれませんが、往々の方は目標をもてない、あるいはぼんやりとした目標しかないという現状ではないでしょうか。
それはですね、おそらく、目標に意味づけをしないと目標と認められなくなってしまったからだと思います。
これを達成すればお金がもらえる。有名になれる。昔から言っていたことだからしなければならない。誰かに求められていることだから応えなければならない。
だからがんばる。
逆に、それがないのであればがんばらない。
隆二は目標というものの純度を落としてしまったように、わたしには思えるのです。

しかしそれもまた仕方ないのかもしれません。
わたしたちはロボットじゃない。目標だけを追い続ける存在じゃない。世界、日常、人間関係、それ以外のことだって、わたしたちを喜ばせる。頭を悩ませる。たしかにそこにあるものとしてわたしたちに影響を与える。
霧の中、進んでいる。

隆二にとって高校野球は、人生の澪標だったのではないかと思います。
自分が進めなくなっていた時、『あなたはここにいるじゃないか』と語りかけてくる偶然の存在。
この物語が、あなたにとっての人生の澪標となることを祈ります。

季節を問わず、涼しさを感じさせるような描き方。
湊波さんの投じた一球は、あなたの心のミットに真っ直ぐ吸いこまれていくことでしょう。

――ストライク!

★★★ Excellent!!!

今現在(7月28日)、甲子園地方予選の結果が続々と出る真っ只中。
タイムリーな高校野球の話。

ではない。

これは、がんばっても上手くいかないと嘆く僕と、アナタの物語だ。

周りを見れば、要領のいい人間がたくさん目に入るだろう。
SNS全盛期のいまの時代ならなおさらだ。

隣の芝生はいつだって青く見えるもの。

けれども嘆く必要はない。

僕たちに出来ることは、いつだって自分の庭の芝を育てることだ。

そんな当たり前のことを改めて感じさせてくれる、すてきな作品です。

★★★ Excellent!!!

それでもゼロじゃない可能性を信じて白球を追う高校球児。

大人になるとがむしゃらにに頑張るよりも、スマートに効率よく成果を出すほうが評価される。それでも、無様にもがき続けることはきっと無駄じゃない。

うまくいかない現実と高校野球。大人たちが高校野球に夢中になる心情を余すことなく描いた秀作。

ものすごい奇跡が起こるわけじゃない。でも読み終わったあとは、明日からもう少し頑張ろうと思えるはず。