葬歌

遠くにひろがる野火が、

私の小鳥がかえってくると教えてくれた


ああまた、

届かなかったのだね

これほどまでに遠いのだ

あなたの場所までは。


境目がない平原の

その片隅で野火は

アザミの葉を焼いている


私の小鳥は

どこまで旅をしたのだろう

撃ち落とされ

羽をむしられて

その血は土を満たしただろうか

小さな嘴は

あなたの影を食んだだろうか。


野火の彼方から

無数の私がかえってくる

うたわれなかった歌をくちずさみ

私のもとへと


どれくらい放てば

あとどれくらい放てば届くのだろう


撃たれた小鳥の数はもう

数えることも出来ない

野火はおとろえず

朝も夜も

もえ続けている


けれど何度でも

私は小鳥を放つだろう

わたしの指を切り落とし

わたしの髪を切り落とし

小さな鳥を放つだろう

私の言葉をたずさえて

小鳥は野火を目指すだろう




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夜のおはなし @mojimajo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る