『雪おじさん』
やましん(テンパー)
『雪おじさん』
これは、基本的に、フィクションです。
👻……………………………………👻
ある、異常に寒い雪の降りしきる夜のことでありました。
事務所には、課長さんと、ぼくだけが残って残業しておりました。
11時を過ぎた辺りから、外はますます大雪になってきました。
『こりゃ、今夜は帰れないなあ。宿直室を借りようか。』
『そうですね、課長。あの、ここは、出るという、うわさが、ありますね。』
『なんだ、こわいのか? うわさだよ。事実じゃないから。ま、男ふたりじゃ、楽しくないがね。』
『あの、宿直室が、一番怪しいとか?』
『ぶわっはっはっは! じゃ、帰るか?』
『遭難します。それか、家に着いたら朝になります。』
ぼくたちは、12時過ぎには仕事を切り上げ、宿直室に入りました。
『課長は、👻が出る、その話しのいきさつをご存じなんでしょう? ややかさんから、聞いたんですが。』
『ふん。くだらんことだ。30年ほど前に、うつとかで、まともに仕事ができなくなったやつがいたんだ。やましん、とか、いうやつだ。まあ、ぼくがおもうに、もともとダメなやつだったんだ。体調不調を理由にして、本格的にさぼりはじめたから、少し、叩いてやった。結局、回りから厳しく言われて、辞めて行ったんだ。自決したらしいが、そこは、よく知らない。OBの誰かが、ここで、その幽霊👻を見たみたいなバカなことを言ったらしい。それだけだ。』
『はあ………。』
『少し、中も、寒くなったかな。寝よ。』
ぼくたちは、昼間の余熱で、いまだ、なま暖かいビルの中で、寝たのです。
👻 🔥 👻
それから、どのくらいたったのか、あまりに寒いので、ぼくは目を覚ましました。
すると、小さな声がします。
『しっくん、だれか、ねてる。ねんねする場所ないなあ。』
小さな、ぬいぐるみさんたちが、たくさん宿直室の中に現れたのです。
ぼくは、動けませんでした。
『こっちは、ちょとだけ、年寄りで、こっちは、まだ若そうなお兄ちゃんだよ。食べていいかなあ?』
『………なになに、・・・・』
暗い部屋の中に、真っ白なかげが、現れたのです。
『ほう、このひとは、知てる。むかし、ぼくより位は下だたけど、仕事中に、仕事でこのひとの部所にいっていたら、邪魔物扱いされた。じゃまだから、うろうろするな、と。でも、それは、必要な仕事だったんだ。内線電話で、はでに叱られた。』
『しっくんが、どじだから?』
『どきい〰️〰️。幽霊は、理不尽でもうらむものなの!』
幽霊は、訳わからないこと言いながら、その顔を課長に近づけ、課長の顔に向かって、真っ白な息を吹きかけたのです。
それから、ぼくの上にやってきて、………決して、美男子でもカッコ良くもない、おじさんの幽霊に覗き込まれる、この、おぞましき恐ろしさ!
回りは、沢山の古びた、ぬいぐるみさんに取り囲まれております。
おまけに、青白い炎🔥が、ぐるぐると飛び交うのです。
『きみ、まだ若いな。ま、関係ないよな。助けてあげよう。ここで、みたこと、しゃべんないでね。すぐわかるじゃん。ま、半世紀くらいたったら、時効だね。きみ、ぼく、どっちも、当分は、ここにいるんだしさ。今夜は、印刷室で、遊ぶ。みんな、行こうね。』
『うん。しっくん。』
その幽霊さんは、たくさんのぬいぐるみさんたちを引き連れて、消え失せました。
・・・・・・・・・・・・・・
課長さんは、重い凍傷で、長く生死の境をさ迷ったあと、その後、どこか県外に転勤になりました。
かなりの、うつ状態になったらしいとも聞きましたが、はっきりしたことは、もちろん、何も公表されません。
ぼくも、しばらくは、静養しましたが、課長ほど重症ではありませんでした。
警察の調査もありましたが、ぼくは、一切みたこと、は、話しませんでした。
課長さんは、狂気のなかで、幽霊や、たくさんのぬいぐるみさんの話を、したらしいですけれど。
結局、そこは、課長さんの妄想なんだろうと、あいまいのままになり、でも、そのあと、社員による、供養が行われたことは、よく、覚えております。
半世紀前のことでありました。
その建物は、もう、ありません。
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『雪おじさん』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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