血は水より濃いが魂より薄い

 その日の夜。

 私は翌日のために早く寝ていた。

 突然、目が覚めた。

 とりあえず、お手洗いに行き戻ると枕もとのスマートフォンが鳴った。

『また、迷惑メールかな?』

 速報だった。

――萩原健一氏、死去

 私は、特に強いファンではなかったが困った。

「春平じいさん、どうするんだろ?」


 私が萩原健一氏を知ったのは高校生時代だ。

 あるドラマを見て「カッコいいなぁ」と思った。

 当時、氏は四十代だった。

 私は十代後半。

 

 それから、今度は私が四十代になった。

 色々なことがあって氏もいろいろあった。

 時代も平成から令和へ移行した。

 ネットで萩原氏の言葉でこんなものがあった。

「二十代、三十代は悩め。誰かのせいにするな。そうすれば道が見つかる」

 この言葉で私の小説に出てくるキャラの骨が出来た。


 平野平春平ひらのだいらしゅんぺい

 時代が時代なら『剣聖』とも呼べる星ノ宮(私の小説の舞台)の『鬼』だ。

(ここいらの話は拙作「むかし、むかしの今日のぼく」「ポップスター」に出てきます)

 自分の大好きな「爺ちゃんキャラ」を詰め込んだキャラであったが、具体的なモデルがいない。

――一見普通で、でも、中身は複雑

 おこがましいが、もしも、私の作品が映像化したらこの人に春平を演じてほしかった。


 今のドラマは何でも台詞や仕草で表現しようとする。

 でも、萩原氏は存在そのものが表現だったと思う。

 汚いものも、綺麗なものも、おぞましいものも、やさしいものも、全部あった。


 故人に追悼の意を送ります。


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夕方六時に私はホットドッグを作った 隅田 天美 @sumida-amami

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