夕方六時に私はホットドッグを作った

隅田 天美

料理の素人(一般人)が架空の料理を再現した実話 その2

 前回の『深夜二時に私は根深汁を作った』が好評で(未読の方、ぜひ、そちらもどうぞ)続きをやりたくなった。

 というか、こう思った。

『そうだ、だったら、前々からやりたかったことをやろう』


 藤原伊織の代表作『テロリストのパラソル』

 新宿中央公園で起こった爆弾事件を現在アルコール中毒のバーテンダーが今と昔の出来事を紐解きながら犯人を捜すハードボイルド小説である。

 とは言っても、元々小説から入ったのではない。

 最初はドラマからだった。

 その辺の話は追々するとして、ドラマで見て「これ、面白そう」と原作小説を買った。

 冒頭、事件に巻き込まれながらも自分の立場が分からない主人公のいる(住んでいる)店で出していたホットドッグを作ることにした。


 まずはスーパーでお買い物である。

 キャベツはある。(少しお高め)

 カレー粉もある。

 が、肝心のホットドッグにおける主役。

 コッペパンと大きめのソーセージがない。

 特にコッペパンは『お前、絶滅危惧種か?』レベルで無い。

 私の住む町のスーパーには店直営のベーカリーも併設されているのだがコッペパンはない。

 あったとして、中にあんことかジャムとかマーガリンが入ったものだ。

 しかたなく、小さいコッペパンのような『米粉でできたパン』を買う。

 なお、このパン自体は普通のパンと何ら変わりはなく美味しく頂ける。

 ソーセージはフランクフルトで代用。

 バターも買う。

 が、今度は種類が多い。

 そこに【カロリー三分の一】の文字が目に飛び込んだ。

 材料を揃え、お会計をして車に戻った時、件のバターにこんな注意書きがあった。

『この商品は、○○パーセントをバターであり××パーセントは植物油(作者より 早い話がマーガリン)です』

――再現率がぁ……

 私はハンドルに頭を置いた。


 それから、約五日後。

 前回の反省を踏まえて、今回は夕方に作る。

 まずキャベツを千切りにする。

 今や千切りキャベツなどスーパーやコンビニでカットされているものがあるがあるが『テロリストのパラソル』が江戸川乱歩賞と直木賞のダブル受賞になったのは平成一桁時代である。(平成七年と平成八年)

 次にバターをフライパンで溶かす。

――さて、カレー粉を出すか……

 が、カレー粉が見つからない。

 血の気が引いた。

『おいおい、バター溶ける(火は止めた)!』

 幸い、冷蔵庫の中にあるのを発見し事なきを得た。

(「だから、台所を整理」と言われそうだけど)

 キャベツを炒めフランクフルト(切れ目が最初から入っている)を入れカレー粉を投入。

(小説ではウィンナーを炒めてからキャベツ。再現率がどんどん低くなっている……)

 パンに切れ込みを入れてバターを引いて炒めたキャベツとフランクフルトを押し込み、トースターで焼く。

 焼けたら、ケチャップをかけて完成。

『マスタードはどうした?』


 実は買うときにコッペパン以上に悩んだのがマスタードだ。

 私は今年、不惑の四十代になったが未だにお子様味覚なのだ。

 コーヒーは最低でも微糖であり、過度の激辛料理は大嫌いだ。

(ブラックも飲めるけど、エビチリも好きだけど)

 仮に買ったとしても、他に料理の幅がなく冷蔵庫の隅に追いやられるだろう。

 それは嫌だった。

 なので、買わなかった。

(はい、再現率がどんどん低くなっております)


 できたのは夕方六時。

 今回はちょうど、夕食時である。

 前回のように今日が明日になってない。


 食べた感想は、「これ、完璧に再現したらどうだったんだろうなぁ」という微妙なものだった。

 正直なことを書けば、ここに特出して『美味い』ものはないし、『不味いもの』もない。

 まあ、作中ではビールと一緒に出てくるのだが私はアルコールが苦手だ。

 ビールと一緒に食べたら、また感想は変わるのだろうか?

 ホットドッグ自体は普通に美味しい。

 ただ、マーガリンの風味も強い。


 休日にハードボイルド小説を片手にホットドッグを作ってみるのはどうでしょうか?

 もし、そうしたら、ぜひ、私に教えてほしいです。

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