第42話 なぜ季節から始まる?

「ほとんどの小説が、季節から始まる。なぜ? 大御所、素人、みんな季節から。なぜ? 視聴者に、どんな季節かということを伝えたいのだろうか? 出版不況の原因でもある、作品、タイトルは違えど同じ展開。冒頭として仕方がないのか、それとも業界の掟なのか。読む方は同じでつまらないだろう。それでも有名な作家の作品は売れる。素人の作品は売れない。でも、アイドルの作品は売れる。やはり作家になるためには、芸能人になった方が早い。でも、プライベートをとやかく言われたり、週刊誌に好き勝手なことを書かれるのも嫌だな。ネットでプライベートを盗撮された動画を投稿されるのも嫌だし。でも、人気が出なければ、プライベートも安全。わ~い! 良かった!」

 天は、想像を膨らませた創作意欲が高すぎる。

「なに、バカなことを妄想しているのよ。本当にあと2万字くらいで、剣と魔法の無い、戦闘の無い、現代ドラマの痛快コメディーを考えないといけないという時に、ふざけるのはおやめなさい!」

 麗は、天の頭を一撃で殴りつける。

「試作品をどうぞ。」

 大蛇は、自分なりに痛快コメディーを考えた。


「何か面白いことはないかな~?」

 高校生は道を歩いている。

「何か、何か、何か、面白いことはないかな~?」

 高校生は悩み続けている。道はアスファルトで平坦だ。とても安全な道である。

「ギャア!?」

 その時、高校生は何かにぶつかった。

「いたたたた!? ちょっと! 前を向いて歩きなさいよ!」

 衝突して、かなり痛い高校生は相手にとても怒る。

「あ、電信柱?」

 高校生がぶつかったのは、道に生えてある動かない電信柱だった。

「ううう~!?」

 高校生は考え事をしていたので電信柱にぶつかったのだった。高校生に恥ずかしさが込み上げてくる。

「ちょっと!? どうして道に突っ立ってるのよ!? おかげでぶつかって転んでたんこぶができたじゃない!? 警察に訴えられたくなかったら、示談金をよこしなさい!」

 高校生は照れ隠しのために、無過失の電信柱に詰め寄ってみる。

「・・・・・・。」

 しかし、電信柱は何も答えない。

「前を向いて歩いていなかったのは私だ。」

 高校生は、諦めて前に進むことを選択した。

「誰にも見られてなくて良かった。もし見られていたら、私が面白い人になってしまっていた。セーフ。セーフ。」

 高校生は、人通りのない道を歩いていて、誰にも見られていないと安心した。


「クスクスクス。」

 高校生は、知らない。最近の町には監視カメラが腐るほどついている。それこそ電信柱にもついている。

「この高校生はバカじゃないか? 日本の将来が心配だ。ワッハッハー!」

「たまにいるんだよな! 電信柱にぶつかる奴! キャッハッハー!」

 監視カメラのモニター画面をチェックしている遠方の警備員の監視室では、高校生が電信柱にぶつかる映像がバカ受けしていた。

 試作、終わり。 


「普通の現代ドラマですね。ニコッ。」

 笑は、4コマ4行で終わりが1000字に膨れ上がったことを良しとした。

「1テーク1シーンごとに話の内容を変えるか? そうすれば痛快コメディーで、中をつまらなくせずに、最後まで面白く10万字いけるかも。」

 苺は、痛快コメディーは最初の掴みは面白いけど、真ん中がつまらないので、視聴者は途中で見なくなることを知っている。

「1話1話にしましょう。この話に試作品を、もう1話書くと、2000字を超えてしまいます。」

 ということで、つづく。

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