第12話 忍法! 子供向け!

「心が汚れているわ! もっと純粋にライト文芸を楽しまなくっちゃ! 普段のラノベもオヤジギャグ作品ばかりだけど、もっと対象の精神年齢を下げて、もっと成人はお父さんお母さんとして、その子供向けの作品にしよう! その方が一般大衆ウケするに違いない!」

 奏は、皇族なので努力もしなくても、自分の好きなモノは手に入る。お金も他人も関係ない。周囲の人間は全て自分に跪く。海外旅行、進学、就職、チョコレートでも何でも宮内庁が手配してくれる。お金持ちに他人の痛みが分かるはずがない。だって本当の痛みを知らないのだから。

「さすが奏姫。睦月は感服いたしましたでござる。ニンニン。」

 睦月は、由緒正しき忍者の家柄、旧暦家の一人娘として主君の奏に絶対服従である。

「ただ現状に飽き飽きしているのと、ポケモ〇の映画をテレビで見て「やっぱり良い話にしよう!」と閃いただけじゃない。」

 如月は、方針転換の裏事情を素直に語る。

「邪悪な心をきれいに浄化したポケモ〇の映画はスゴイですね。だから一般大衆にウケるんでしょうね。「大人が自分の子供に見せたい」映画でした。」

 弥生は、不覚にも、もしかしたら世の中はきれいなんじゃないかと思ってしまった。

「親が公務員や大企業勤務のディズニーラン〇に行ける子供は、世の中はきれいと思えるけど、都営住宅や公園のドラム缶で生活しているディズニーラン〇に行けない子供は、世の中をきれいと思えるだろうか?」

 卯月は、未成年の酔っ払いらしくない、真面目な話をする。

「ダメ! そこで難しく考えてはダメだ! 子供向けは「夢に突き進む!」「困っている人を助ける!」だけでいいんだ!」

 皐月は、珍しく情熱的になっている。

「ラノベって「これはこうなって、ああなって、そうか! わかったぞ!」みたいな難しいものはいらないで、「キャー! ドワー! オッホー! アベシー!」これがラノベだ。」

 水無月は、ラノベって気軽な毎回、オヤジギャグの、異世界転生か、青春日常部活モノで、タイトルと内容を少し変えただけでしょっと言っている。

「しかし、これだけ汚れた作品なのに、今更、方向転換ができるのか? 僕のこの手は血で汚れ切っているのに? 汚れの無い赤ん坊を抱くことが出来るのか?」

 文月は、病気だ。創作、構成を深く考えすぎて、ラノベを気軽に読む層とギャップが深すぎるのだろう。

「もっと誰でもわかるモノ。そうなると単純に、子供向けでいいのだ。ドラえも〇もアンパンマ〇も子供向け。毎回テンプレートの同じ展開の単調な作品。作る方も楽ができるというものだ。夏は海でスイカ割!」

 葉月は、楽したい怠け者です。

「子供が分かれば、大人も分かる。きっとラノベ層でも内容が理解できるはずだ。ロングセラーのアニメは、子供向けばかりだ。」

 長月は、長いものに巻かれたい。

「難しい作品っていらないんだな。今までの自分の方向性を全て否定してしまう。」

 神無月は、人間にとって一番難しい「自己否定」に挑戦している。例えると、公務員や政治家は間違いを認めないので日本は借金大国になってしまった。

「で、子供向けはいいけれど、どんな子供向けをやるんですか?」

 霜月は、今後の展開に寒気を覚える。

「それを今から考えるのが、我々の仕事です。ちゃんちゃん。」

 師走は、あっさりと新しい運命を受け入れた。

「さあ! 子供向け創作スタート!」

「ポケモ〇のパクリ!」

「第一声が、それかよ!?」

「せめてリスペクトと言ってください。」

「ポケモ〇のリスペクト!」

「あえて言わなくていい。」

「アッハッハッハ。」

「笑って誤魔化すな!」

「お約束の展開は、ここまでにして真面目に考えよう。」

「例えば、信号待ちのおばあちゃんが重たい荷物を持っている。どうしますか?」

「奪って逃げる!」

「あほ。」

「「おばあちゃん、大丈夫ですか? 荷物を持ちましょうか?」だろう。」

「そんなことが出来るのは、カロヤカさんしかいない!」

「部長の天では、キャラ違いだ。天地がひっくり返る。」

「「ありがとうございます。」こうしてカロヤカさんがおばあちゃんの重たい荷物を持って信号を渡る。」

「なんて良いストーリーなんだ!?」

「描いていて吐き気がする!?」

「手が、手が、震えてきた!?」

「胸が痛い!? 背筋に寒気が!?」

「疫病に感染した!? 誰か助けてくれ!?」

「おい、今までどんな生活をしてきたんだよ。」

「一瞬で忍者が全滅したな。食中毒に似た症状だ。」

「「単純、分かりやすい、良い話」これが牛丼の吉野〇方式だ。」

「さらに、子供向けらしく「伏線なし!」です。」

「ここで問題なのが、ひたすら良い話で押し通すのか、ポケモ〇的に、ラノベ的にに、もし信号待ちをしている重たい荷物を持ったおばあちゃんにぶつかって吹き飛ばすとか、荷物を奪って逃げる泥棒がいたらどうする?」

「解決の選択肢が多数。」

「普通に素手で空手少女的なカロヤカさんで退治して荷物を奪い返して、スッキリする。」

「カロヤカさんが何か棒とか、カバンとか、おばあちゃんとかを投げつけて犯人を捕まえてスッキリする。」

「実はカロヤカさんは、科学者で懐にミサイルやレーザー光線を持っていて犯人を倒してスッキリする。」

「実はカロヤカさんは、魔法使いで犯人を魔法やドラゴンを呼び出して犯人を倒してスッキリする。」

「実はカロヤカさんは、忍者か妖怪で犯人を忍法か妖術でやっつけてスッキリする。」

「何がいいんだろう?」

「ドラえも〇は、未来の秘密道具。ポケモ〇は、ポケモン。アンパンマ〇は、アンパンチ。ドラゴンボー〇は、かめはめ〇。ワンピー〇は、ゴムゴムの実。北斗の〇は、北斗神拳。ナル〇は、忍法。」

「どうしよう?」

「決定事項は、犯人=悪は正義の前に滅びなければいけない。」

「また内容を単純にすると「良いことをするからの悪者を倒すだけ」で一話ができる、若しくは終わる。」

「とても単純というか、分かりやすいというか、手抜きというか、そんな内容でもヒット作は許されているから、業界的にはOKなのだろう。」

「内容はテンプレート的に同じ展開でOK。違うのはキャラクターの性格、必殺技が違うだけでOK」

「難しい伏線を入れると、「ダメ! 伏線を入れてはダメ!」「ダメ! 話を難しくしてはダメ!」の雷オヤジでも入れて、話をストップ。話の方向転換を図ります。」

「めちゃくちゃ単純でシンプルだが、悪者をカロヤカさんが倒して世直しをすればいいんだ!」

「例えば、カロヤカさんが行列の順番に並んでいる。悪い人が順番に割り込む。」

「そこで円盤、カード、などを売るために「順番を抜かすな!」「順番を抜かして何が悪い!」ここで戦いだな。」

「でも戦いを入れると朝ドラにはなれない。」

「朝ドラは、言葉の戦いだからな。」

「順番抜かしの悪者を、カロヤカさんが言葉で、暴力で解決する。」

「みんなに「ありがとう」と感謝される。高齢者でも応援してくれる、ゴールデン・ストーリーだ。」

「今までの汚れたストーリーと180度違う作風だな。ザワザワ。」

「体中に赤い斑点が!?」

「蕁麻疹だ!? 柄にもなく良いことなんて創作しようとするからだ!?」

「ぼーっと生きてんじゃねえ!」

「なぜ!? いきなりチコちゃ〇の名言が!?」

「きっと頭が錯乱してパニックなんだ!?」

「これ、こんだけ子供向けで単純だと、1話1000字で終わっちゃうな。」

「話を膨らましてはいけない! だって子供向けだから、シンプルでいいのだ。」

「第6期を書きだす前に、もう少し考えよう。」

 カロヤカにお任せあれ。

 つづく。

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